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株式会社xpd


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インタビュイー
早川 和良氏 代表取締役社長/CMディレクター
日本天然色映画を経て、1982年に株式会社ティー・ワイ・オー設立に参加。2003年に同社グループ会社「Camp KAZ」設立。株式会社ティー・ワイ・オー代表取締役社長などを経て、2021年より現職。国内外で受賞多数。

魅力的なクリエイティブワークで課題解決へと導く

AOI TYOグループの事業会社として1月に誕生した株式会社xpd(イクスピーディー)。映像制作やPR、イベントなどさまざまな領域でクリエイティブワークを世に送り出してきたグループ事業を結集し、「コミュニケーションデザインファクトリー」をコンセプトに、コミュニケーションの設計から実行までを担っていく。TYOの創業メンバーのひとりで、同社代表取締役社長に就任した早川和良氏にxpd設立の経緯や今後の展望などについてお話をうかがった。(収録:2021年2月15日)
【 CM INDEX 2021年4月号に掲載された記事をご紹介します。】


— xpdを立ち上げた経緯、社名に込めた思いをお聞かせください
 TYOはCMの映像制作会社として創業してからおよそ40年が経ちます。テレビCMが広告の中心として活気のあった時代とともに成長を遂げ、デジタル技術の発展などに伴って広告を取り巻く環境が大きく様変わりしたこの10年間は、イベント会社やウェブ制作会社など、クリエイティブに関わる事業領域の拡大を進めてきました。こうした我々の持っている資産を新しい時代に生かしていくために、TYOとxpdに再編することにしました。
 TYOは映像制作を主な事業といたします。ビジネスの軸はCMで、大型映像からSNSなどのコンパクトな動画まで、さまざまな映像を深掘りしながら多様化する映像のニーズに対応していきます。
 xpdでは映像制作に加え、TYOグループの持つイベント、PR、アニメーション、ミュージックビデオ、デジタルコンテンツといったさまざまなケイパビリティを活用し、コミュニケーションを全方位的に引き受けます。拡張を意味する「expand」と、我々の能力を“x(クロス)”させることでコミュニケーションの効果を最大化していきたいというふたつの思いを社名に込めました。
 イベントを例にすると、現在は人を集められないという最悪の状況です。一方で企業は新製品をアピールしてマーケットを拡大しなければなりませんから、イベントを開催したいというニーズはあります。オンラインイベントも解決策のひとつですが、製品を実際に触れることができないといった欠点があるため、オンラインで開催した後に、興味を持った参加者をリアルなイベントに導くというハイブリッドな形が理想的ではないかと。そのときに重要な役割を果たすのが映像です。オンラインを通して製品を紹介するだけではなく、お客さまに疑似体験をしていただくこともできる。そこにリアルなイベントをジョイントさせることで、より緊密なコミュニケーションが実現します。TYOで培ったアセットを連携させることで、コミュニケーションの最適化を図っていくことが可能です。

渋谷区神宮前の新オフィス。「垣根がないワンフロアで、有機的にスタッフがつながれる」をコンセプトに、フリースペースを複数箇所設けるなど、事業領域にとらわれずケイパビリティを拡張し、人を巻き込んで掛け算を生み出せるような空間になっている

サイボウズ「Cybozu Days 2020」(イベント)
昨年、幕張メッセで3日間にわたって開催されたサイボウズの総合イベント「Cybozu Days 2020」をプロデュース。 「エゴ&ピース」をテーマに、圧倒的な空間設計とさまざまな演出で会場を彩った

— 映像が広告コミュニケーションに与える影響についてどのようにお考えですか
 広告も販促も「商品を売る」というゴールは同じですが、両者はまったく異なるものです。広告はブランドの価値を高めてお客さまの心を捉える取り組み、販促はある種のカンフル剤で、過激化しながら打ち続けると、最終的に価格を下げる、つまり価値を下げかねないものだと考えています。分かりやすくいえば、欧米のハイブランドは値下げのチラシを配らないということですね。

ストーリーのある広告映像は資産になる
長年にわたる映像制作の実績が最大の強み

 ある脳科学者がインプットの方法として、データだけでは忘れやすくても、データをストーリーに組み込むことで脳に定着し、拾い出しやすくなると話していたんですね。私が30年ほど前に作ったJR東海さんの「クリスマス・エクスプレス」のCMは今でもクリスマスの時期になると必ず話題に上ります。時代を超えて人々の記憶に残るCMは企業にとってかけがえのない資産となりますし、こうしたストーリー性のある広告映像を作ることはブランドを長続きさせる上で非常に重要な施策のひとつなのではないでしょうか。
 広告のストラテジーは日々進化しているものの、アウトプットに爆発力がなければ絵に描いた餅にすぎません。TYOの歴史では吉田大八、真田敦、石川寛、浜崎慎治、佐藤渉と多くの演出家を輩出し、またブックオフのキャンペーンで松井一紘がTCCの最高新人賞を受賞するなど、優れたクリエイターを育てる土壌があります。そうした環境下で「どうすれば消費者の心を動かせるか」という、理論だけでは太刀打ちできない部分を追求し映像を作り続けてきたことの蓄積が我々の強みになっています。コンテンツをリーズナブルに作リ上げることも重要ではありますが、やはり優れたクリエイティブを通してクライアントのブランディングをサポートするという大きな視点を持つことが仕事の質を左右すると思います。

コミュニケーションに大切なのは
方法論ではなくクリエイティブの力

— 今後の貴社の取り組みについて、また広告業界はどのように変化していくと予想されますか
 現状は各機能が集まってスタートしたばかりで、それぞれの領域のプロフェッショナルは多数在籍しているものの、コミュニケーション全体の設計ができる人材の数は十分とはいえません。
 TYOでは多くの職人を生み出してきましたが、xpdのスタッフにはそれぞれCM、イベント、PRといった柱を作った上で枝葉を伸ばし、自分の領域を広げて森を作ってほしいと思っています。ひとつのコアアイデアに対して多くの社員がつながりながら最適なコミュニケーションを作り上げていく組織を目指していきます。
 広告業界は急速に変化していますので、今後もさまざまな試行錯誤が繰り返されていくはずです。AIを活用するなど科学的なアプローチによるクリエイティブの検証方法も増えていますが、そこから優れたクリエイティブは生まれてこない、私はそう思うんです。科学は誰がやっても同じ答えが出る再現性を追求するものなので、そこからは爆発力を伴う表現を導き出すことはできない。デジタル広告といった次々と登場する新たなメディアに対しては、それぞれに有効な方法論を選べばいいのであって、最も重要なのは人間が作り出すクリエイティブの力であることは変わりません。人の心を動かす広告とは何か、それを言語化するのは難しいのですが、CM、デジタル、イベントなど消費者との接点を長年にわたって担ってきた我々にはそのノウハウがあります。複雑化する広告制作時のさまざまな課題解決に向けて、我々の資産を多くの企業に活用していただけたらと考えています。