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太陽企画 株式会社


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インタビュイー
岩井 健二氏 代表取締役社長兼CEO
1985年太陽企画入社。プロデューサー、制作部長などを経て、2002年に取締役に。2014年に代表取締役社長に就任し、現在に至る。2016年から一般社団法人 日本アド・コンテンツ制作協会(JAC)の理事長を務める。

多様な人材と優れた映像技術で新たな価値を創出

1968年に創業した老舗プロダクション、太陽企画 株式会社はその当時、未開拓だった映像のフィールドでさまざまな技術に挑戦し、日本初・世界初の映像表現を実現してきた。
現在も「考え方から考える。作り方から作る。」をモットーに、職人集団として新しい映像表現に挑み続けている。同社代表取締役社長兼CEOの岩井健二氏に映像コンテンツを制作する上で大切にしていることや今後の展望についてお話をうかがった。(収録:2020年11月27日)
【 CM INDEX 2021年1月号に掲載された記事をご紹介します。】


— 貴社が手掛けた直近の代表的なCMについて
 出稿量の多いCMでいえば、キリンビールさんの『一番搾り』※1が挙げられます。一番搾りが世に出たときの最初のCM(緒方拳さん出演)は弊社が手掛けたもので、20数年ぶりに携わった思い入れのある仕事です。現在のCMでも発売当時と同じニュアンスが感じられることが我々としてもうれしく思います。
 若手俳優5人が出演する花王さんの『アタックZERO』では2020年度のACCゴールドを受賞しました。さだまさしさんたちが出演する新シリーズを開始した明治さんの『明治プロビオヨーグルト R-1』も2017年から制作を担当しています。
※1 キリンビール/一番搾り「満島ひかり ビールとひまつぶし」篇
堤真一、満島ひかりらを起用し、キャストが『茶色の小瓶』のメロディーで歌うCMソングとともに、ビールをおいしく味わうひとときを描くシリーズ。2017年の開始以来、CM好感度調査で高く評価されている

映像を作るのは“人”
一人ひとりのパフォーマンスを最大化する

— 消費者の心をつかむ数々のCMを手掛けられていますが、CM制作会社として大切にされていることは
 映像は機械ではなく“人”が作るもの。つまり制作会社はどんな時代でも人材そのものが肝要なため、個人のパフォーマンスが発揮できる環境作りを大切にしています。特に今回のコロナ禍で、リアルに対面するという方法がことごとく崩され、あらゆることをオンライン化しなければならなくなりました。それを突破するのが変化に敏感で順応性の高い若い人たちの力です。こうした理由から若手の活躍の場を可能な限り作ることを重視しています。また女性の活躍を推進しており、女性が結婚や出産を機に休職しても再びプロデューサーやPM(プロダクション・マネージャー)として働きやすくなるようなサポート体制の拡充に取り組んでいます。
 弊社は、本社ビル※2の中に撮影スタジオから編集、MAスタジオまで備えています。ワンストップでCMを仕上げられることは社員の立場からすると、身近にいるエキスパートにいつでもコミュニケーションが取れる環境であるだけでなく、自分の力を最大限に発揮できる職種を目指すことにもつながっていきます。一人ひとりの持つ潜在能力を生かしてPMからディレクターやエディターに、CGアーティストからディレクターになった社員もたくさんいます。また本社の5階には、自由に出入りができるコワーキングスペースを設置し、イノベーションが生まれやすい環境作りを目指しています。映像やコンテンツ制作はオートメーションではありません。多くの人員が関わり、オーダーメイドかつ工夫や改善の積み重ねで実現していくものですから、社内の関係性は業績のみならず、撮影現場の雰囲気や出来上がる映像にも少なからず影響します。そのためにも社内コミュニケーションには常に気を配っていますし、会社は社員が楽しみながら働けて、可能性が広がっていく場であることが必要だと思っています。

※2 本社内にスタジオ、編集室、MA室を備えるなどワンストップで映像制作ができ、フリースペースのラウンジは社員同士がコミュニケーションを図る場として活用されている。多様な社内ユニットが組まれており、クライアントの細かなニーズまで対応できることも同社の強みだ

CMで培った映像技術の力で
新たなフィールドへのチャレンジを続ける

— デジタル技術の急速な発達を背景に、世の中に映像コンテンツがあふれるようになりました。
  こうした環境下で貴社が注力していくこととは
 これまで50年余にわたり、CMで培ってきた映像制作の力を生かして新たな取り組みを行なっています。というのも、オンライン配信やライブストリーミングなどのプラットフォームがいくつも発生し続ける中、コンテンツを制作するだけではそのコンテンツが人に届かない場合も増えているからです。そこでマーケティング運用やライブ配信、裸眼立体視といった最先端デバイスを使ったコンテンツ制作やタッチポイントの増強に取り組んでいます。
 具体的には、デジタルマーケティングカンパニーの株式会社PLAN−Bと業務提携し、マスからデジタルまでの総合的な広告制作体制を構築しました。またコロナ禍で需要が増えてきたライブ配信に着目し、YouTube LIVEの音楽情報番組『WONDER WHEEL』の配信を2020年11月に開始しました。リアルタイム合成した3DCGの舞台で、アーティストがパフォーマンスを披露する番組です。これまでにない新たな取り組みで経験や実績を積み重ねています。
 さらに弊社は、被写体をさまざまなアングルから撮影し、そのデジタル画像から立体的な3DCGモデルを作成する、フォトグラメトリ※3を使ったコンテンツ制作を始めました。フォトグラメトリは今、文化遺産のデジタルアーカイブ化やVRなどに活用され、注目されている技術です。
 その一方で、映像表現の意味をとことん追求する映像も制作しています。2020年2月に劇場公開したストップモーション・アニメーション作品の『ごん − GON, THE LITTLE FOX −』※4です。教科書にも載っている童話『ごんぎつね』を新たに解釈した作品です。人形の頭を木彫りし、時代設定や生活様式に合わせた日本家屋、衣装、小道具を一つひとつ研究しながら手作りしました。本物の水や植物を用いて物語の中の景色を再現しています。国内外88以上の映画祭などで上映され、そのうち現在49もの賞を受賞しています。
 このようにニューノーマル時代に必要な映像コンテンツの制作と、表現装置としての映像の研究を同時並行で行なっています。弊社の創業メンバーのひとりでCG 制作に携わっていた柳瀬三郎が「CGなんて誰でも作れる。大切なことは、太陽の光を作るのに実際の太陽の光を知っているか、自分の中で『作りたい絵』が積み上がっているかどうかだ」と言っていました。技術を習得するのは誰でもできるが、そこに命や意味を吹き込むのはその人なりのビジョンがないとできない。我々もそういうことを大事にしていきたいです。
 ご紹介したほかにも、空間やXRを中心とした体験型のコンテンツやSDGsに関わるものも扱っています。一人ひとりの個性を引き出し、技術にビジョンを携えて時代に必要なさまざまな領域に挑戦し続けたいです。

※3 フォトグラメトリ
被写体をさまざまなアングルから撮影し、その画像を解析、統合して立体的な3DCGモデルを作成する技術。5Gで拡大するXR産業での活用が広がっているほか、文化財保護などにも利用されている

※4 『ごん − GON, THE LITTLE FOX − 』
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