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株式会社AOI Pro.


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インタビュイー
潮田 一氏 代表取締役社長
1996年AOI Pro.入社。プロデューサーとして数々の企業のCMを手掛けた。執行役員、取締役として国内および海外事業の管掌を務め、マレーシアやベトナムの大手映像制作会社のグループ会社化を実現。2019年に代表取締役就任。

老舗の強み生かし世界で戦える集団に

1963年設立の株式会社AOI Pro.は『au』の「三太郎」シリーズといったヒットCMをはじめ、映画やドラマなどさまざまな映像制作に携わる国内トップクラスのプロダクションだ。またアジアを中心にグローバルに事業を展開し、手掛けたコンテンツは世界でも高く評価されている。同社代表取締役社長の潮田一氏に海外事業の狙いや今後の取り組みなどについてお聞きした。(収録:2021年3月11日)
【 CM INDEX 2021年5月号に掲載された記事をご紹介します。】


— 数多くのヒットCMを手掛け、6年連続で制作会社部門のCM好感度総合1位に輝きました
 素直にうれしいです。1番になるのは光栄なことですし、BtoBビジネスをしている我々は一般の方に知っていただく機会が少ないため、「このCMを作っている」と言うだけでコミュニケーションを図りやすくなりますからね。
 当社が携わっている『au』の「三太郎」シリーズが長くヒットしているほか、昨年は『ゼスプリ キウイフルーツ』のCMが「2020 60th ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」のブランデッド・コミュニケーション部門で総務大臣賞/ACCグランプリを獲得し、アジア太平洋地域のマーケティングキャンペーンを表彰する「Tangrams Strategy & Effectiveness Awards 2021」でもブロンズを受賞するなど、国内外で高く評価されました。在宅時間が増えてテレビやSNS上の映像に接する機会が増加した中で、本作が多くの方の心を捉えたことには達成感がありますね。視聴者に愛されるCMを作ることはもちろん、広告を通してメッセージを届けようとするクライアントをサポートすることが我々の仕事ですので、そうした点では役割を果たせたと考えています。

グローバル視点でのビジネス展開は
人材育成、サービスの両面で大きな価値

— 「Spikes Asia 2021」でマレーシアのグループ会社がグランプリを受賞するなど、海外展開に力を入れています
 創業者の原(仁氏)が道標を作り、4代目の社長の藤原(次彦氏)がそれをドライブし、私がベトナムやマレーシアなど地域を拡大して現在に至っています。
 現場で仕事をしていたときに海外ロケが年間120日ほど続いたことがありました。海外では監督に仕事の依頼があり、監督を中心に業務を進めるスタイルが一般的で、制作現場も日本とは異なる点が多々あります。また、さまざまな文化的背景を持つ人々と出会い、仕事の向き合い方やモチベーションの維持の仕方などを学び、自分自身について考える好機となりました。人材の交流や社員の育成という意味でも、豊かな才能に出会う可能性を広げるという意味でも、今後も積極的に海外に進出していきたいですね。
 またCM映像制作の国内マーケットがこれから大きく成長するとは考えにくく、市場の大きな世界でのビジネスにチャレンジしていくべきだと思っています。
 当社にはプロダクションとしては珍しく英語が堪能なスタッフが多く、外国人の従業員も数多く在籍しています。また、欧米、アジアに拠点やパートナー企業があるため、グローバルで展開したい国内のクライアントに対してもさまざまなサポートが可能なことは強みのひとつですし、こうした世界規模の連携は、コロナ禍という環境では特に力を発揮できると考えています。

今年4月にオープンした代官山オフィス。個人やチームが働く場所をフレキシブルに選択しながら、円滑にコミュニケーションを行うことで、クリエイティビティを発揮しやすくなるようなオフィスを目指したという

常に新たな領域に挑戦
若手にチャレンジの場を与えることが重要

— メディア環境が大きく変化する中で、今後の取り組みやクリエイティブの可能性についてお聞かせください
 貧富の差がある東南アジアはテレビのない家庭が少なくない一方で、多くの人々が当たり前のようにスマホを使っており、日本に比べてデジタルに対するリテラシーが非常に高いんです。日本の若い世代も同様にスマホによる情報収集をしているため、我々としてもあらゆるメディアに対応してコンテンツを発信できる体制を整えておく必要があります。テレビCMの制作会社だからこそのプレミアムな映像はもちろん、撮影から公開までのリードタイムが短いSNS動画のようなカジュアルな映像も柔軟に手掛け、どのような映像でもひと味もふた味も違う、AOIならではの優れたクオリティーのコンテンツに仕上げていきたい。また、我々には長年アウトプットを担ってきたという強みがあります。そこに付加価値を持たせられれば、クライアントにも映像をご覧になった方にも喜んでいただけるものを提供できると考えています。
 設立から60年近く経ちますが、今後も100年以上映像制作を続けるためには老舗としてあぐらをかくのではなく、常に新しいことを学び、取り入れながら進化しなければなりません。そのときに重要となるのが若い力です。タフな仕事が多いですが、若いスタッフ一人ひとりが映像に対する愛や「自分がどうなりたいか」という強い思いを抱き、実現に向けて壁を乗り越えてほしい。彼らの成長を促せるよう、海外の制作現場に立ち会わせるなど、さまざまな経験を積むことができる場を作っており、SNSやインフルエンサーマーケティングといった新しい領域の事業はベテランではなく、若いスタッフが中心となっています。その挑戦や成功による自信が才能を開花させるきっかけとなり、監督やプロデューサーとして活躍してくれれば会社としてこれ以上幸福なことはありません。我々の仕事は人材が大切ですから、そうした社員をひとりでも増やしていきたいですね。また、人材育成の施策のひとつとして昨年7月に『AOI Film Craft Lab.』※1を立ち上げました。映像クリエイターを養成するためのサブスク型のコミュニティーで、映画監督や広告クリエイターが講師を務めます。日本全国の才能ある若者にチャンスを与え、将来的には我々をサポートしてもらうという好循環が生まれることを期待しています。
 クリエイティブには魔法があります。撮り方や伝え方について多くのスタッフが知恵を出し合い、結果として想像を超える映像が撮れ、その映像が広告主のビジネスを加速度的に成長させたり、それを見た人の人生を変えたりすることがある。ですから社員には自分の仕事に誇りを持って、とことん考え抜いて前のめりで参加してほしいと思っています。今は日本も世界もなく、どこにいても仕事ができる時代ですし、ノンバーバルである映像はいまや言語のひとつだといえます。グローバルな人材やネットワーク、アウトプットができる強みを最大限に生かし、AOIを世界で戦える集団にしていきます。

※1 AOI Film Craft Lab.
『AOI Film Craft Lab.』は学生、セミプロを対象に、是枝裕和氏、児玉裕一氏、永井聡氏ら一流映像作家や広告クリエイターによる講座をオンラインとオフラインの両軸で提供する「“日本で一番贅沢”な、映像の現場体験の学びの場」となっている