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株式会社 二番工房


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インタビュイー
金谷橋 忍氏 代表取締役社長 エグゼクティブプロデューサー
1962年生まれ。2011年株式会社 二番工房入社。2016年株式会社ソーダコミュニケーションズ 代表取締役社長に就任。 2018年より現職。キリンラガービール、東京ガスのガス・パッ・チョ!、三井不動産「堀部安兵衛」など多数のCMを手掛ける

モノ作りの原点に回帰し新たな挑戦へと向かう

1974年に創業し、1984年からは東北新社グループの一員としてCMをはじめ数々の映像コンテンツを手掛けてきた株式会社 二番工房。テクノロジーの進化への対応に加え、人やクラフト力に重点を置いた“モノ作り”への誠実な姿勢は、多くのクライアントから信頼を得ている。代表取締役社長の金谷橋忍氏に、同社の強みや今後についてお話をうかがった。(収録:2022年1月11日)
【 CM INDEX 2022年2月号に掲載された記事をご紹介します。】


コンテ以上の映像に仕上げるために客観的な視点から意見を出す

— 情感豊かなテレビCMを数多く手掛けられています。映像制作をする上で大切にしていることをお聞かせください
 日本生命の企業広告※1は当社の代表作といえるCMです。生命保険のCMは死や病を描くという非常に大きな壁があるのですが、2018年にオンエアされた作品は、娘を見守り続ける亡くなった父の思いと、娘から父への感謝の気持ちを交差させて描いたもので、清原果耶さんの演技もさることながら関根光才さんの演出が見事でした。数多くいる演出家の中から関根さんをスタッフィングしたことは、制作会社として大きく貢献できた点ではないでしょうか。また2019年から担当させていただいている日本マクドナルドさんの『月見バーガー』のCMも、離れ離れに暮らす家族への思いを商品を通して描いたエモーショナルな作品となっています。
 CM映像を作る際に、我々はコンテ以上のものに仕上げることを意識しています。映像になったときをイメージしながら客観的に考え、「インサートを撮っておくべき」「こうした方が面白くなるのでは」といった意見を出すこともあります。100人中99人が絶対だと思っても、残りの1人の抱いた疑問や違和感に映像を磨き上げるアイデアの種があるかもしれない。客観性のあるひと言によって加えられたワンカットが表現を劇的に強くすることを何度も経験しているからこそ、最後まで妥協せず作品と向き合っています。また、私が若かった頃、プロジェクトの終了後に「実はこう思っていた」と当時の上司に伝えたところ、叱られたことがあるんです。その意見で仕事がより良い方向に向かったかもしれない、意見に反論してもらうことで自分自身が納得でき、新しいステップに進めていたかもしれないと。テクノロジーやAIが進化したとしても最終的な判断を下すのは人間です。声を上げることは勇気のいることではありますが、それが“モノ作り”の基本であり、結果として映像のクオリティーの向上にもつながっていくと考えています。

※1 日本生命/企業広告「見守るということ。」篇
亡くなった父からの視点で日々を過ごす娘(清原果耶)を描き、見守り続けるという生命保険の価値を表現。このほか病気の母を支える家族を描くものなど、「大切な人を守りたい」という一貫したテーマで展開

社内外を問わずコミュニケーションを重視
バトンを継承してきた人こそが財産

 これまでもコミュニケーションを大切にしてまいりましたが、映像制作現場の分業化が進み、コンプライアンスも厳しくなりました。コロナ禍を背景にリモートも増えているため、その重要性がさらに高まっていると感じています。アウトプットの質の向上という部分に限らず、コンプライアンス上の問題を回避する、業務上のミスをなくすなど、あらゆる場面で積極的なコミュニケーションが求められるようになりました。
 それは出社時も同様で先輩は後輩に、後輩は先輩に声を掛け合うことを励行しており、私も社員と話すことを心掛けています。20代の頃、東北新社の創業者である植村(伴次郎)さんに「金谷橋くん、今日は何をしているのか」と話しかけられたことがあって、子会社の制作担当者にすぎない私をご存じだったことに驚くと同時に、うれしかったんですね。私自身、社長を務めるに当たり、この体験を原点に社員と話すことを大切にしてきました。
 また撮影現場はフリーのスタッフをほとんど入れず、その多くを社員が担っており、若い社員がプロデューサーを中心とした先輩社員の背中を見て成長していく土壌があります。そして社員同士の仲も良い。設立から50年近くにわたってバトンが継承されており、何よりも人が財産になっているといえますね。派手な仕事ばかりではありませんが、一度お仕事をいただければリピートをいただく機会が多いですし、30年以上の長きにわたって花王さんの指定プロダクションに入れていただけているのは、真摯かつ着実に仕事に向き合う当社の姿勢が社員一人ひとりに根付いているからだと思います。
— 二番工房の目指していくものとは
 映像の持つ力は大きくなっています。ダンス動画がバズって多くの人がまねをするといったトレンドは、映像の持つ影響力の大きさを物語っていますよね。今は誰もが映像を作れる時代ですから、クラフトという側面だけではなく、人々に与える影響といった面も含め、プロでなければ作り得ない映像を世に送り出していきたいと考えています。

培ってきた映像技術を活用する取り組み
フットワークの良さを生かして新事業に挑戦

 映像を活用した新たな取り組みにも挑戦しています。先日リリースした『にんじゃWINDOW』※2は、車や電車の長距離移動に飽きてしまう子どもに向け、スマホを車窓にかざすと“うさぎ忍者”が風景の中を走ったりジャンプしたりするというサービスです。企業キャラクターを登場させることもできるため、広告媒体としての活用も可能となっています。また『コハコ』※3はコンパクトな仏壇で、インテリアになじむシンプルなデザインと、音声認識やタッチセンサーなどの技術を搭載し、呼び掛けに応じて故人の写真が表示されるといったコミュニケーション性が特長です。このほかNTTさんが開発した触覚を体験できるデバイス『ME−HADA』と、当社のVR技術と組み合わせ、新しいVRシアターを構築しました。ボクシングで殴られたり虫が身体を這ったりする感触を体験できるというものです。
 こうした取り組みは主に若い社員が主体となって制作しており、私やベテラン社員の経験値でブラッシュアップを図っています。今後も小回りが利くというフットワークの良さと我々が培ってきた技術、発想を生かし、アイデアをビジネスにつなげることで、東北新社グループ全体を盛り上げていきたいと考えています。

※2 にんじゃWINDOW
移動時間をエンターテインメントに変えるサービスで、電通、フューチュレックと共同開発。車窓にスマホをかざすと窓の外に忍者が出現して風景の上を走るというもので、企業キャラクターの活用も可能

※3 コハコ
BIRDMAN、オムニバス・ジャパン、COLOR.とともに製品化を進める“コミュニケーションする仏壇”。テクノロジーを駆使した機能と高いデザイン性で仏壇のイメージを一新し、多くの注目を集めている