グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



TOP >  広告制作会社インタビュー >  株式会社 電通クリエーティブキューブ

株式会社 電通クリエーティブキューブ


画像をクリックして動画を再生

インタビュイー
村山 大輔氏
代表取締役社長執行役員
1994年電通に入社。テレビ局、営業局、ビジネス統括局を経て、2017年より国内グループ会社経営に携わり、2022年1月より現職。

藤森 暁生氏
副社長執行役員
エグゼクティブプロデューサー
1993年電通プロックス入社。電通テック、ピクトと社名は変わるもプロデューサーとして多種多様な映像制作に携わる。2022年1月より現職。

CXを通して真の顧客満足度No.1に挑む

ピクトと横浜スーパー・ファクトリーが合併し、今年1月に設立された株式会社 電通クリエーティブキューブ。映像、グラフィック、デジタルというフルファネルでの広告コンテンツを提供し、最先端のテクノロジーを導入しながら制作のトランスフォーメーションを進めている。代表取締役社長執行役員の村山大輔氏、副社長執行役員の藤森暁生氏に取り組みについてお話をうかがった。(収録:2022年5月17日)
【 CM INDEX 2022年6月号に掲載された記事をご紹介します。】


— 貴社の設立の経緯、強みについてお聞かせください
村山:電通ジャパンネットワークがAX(アドバタイジング・トランスフォーメーション)、BX(ビジネス・トランスフォーメーション)、CX(カスタマー・エクスペリエンス・トランスフォーメーション)、DX(デジタル・トランスフォーメーション)という4つの事業領域を強化する中、当社はCXを体現する会社としてピクトと横浜スーパー・ファクトリーが合併して設立されました。ピクトの映像制作、横浜スーパー・ファクトリーのグラフィック撮影というこれまでに培ってきたクラフト力に加え、Septeni Ad Creativeさんをはじめとしたデジタル領域の各社と強固なアライアンスを組むことにより、CXの全領域をカバーする広告コンテンツを提供できる体制を整えました。また撮影・照明スタッフやスタジオを所有していることも当社の強みのひとつであり、まさにトップファネルからボトムファネルまでワンストップでのマネジメントが可能です。
 現在は映像、グラフィック、デジタルと各分野のプロデューサーがユニットを組んでプロジェクトに臨んでいますが、この経験を通して社員一人ひとりが分野を越えた知見を高め、最終的にはCX領域すべてをひとりで遂行できるプロデューサーの集団にしていきたいと考えています。
— 貴社が手掛けられた代表的な広告について
藤森:凸版印刷さんのリ・ブランディングキャンペーン「すべてを突破する。TOPPA!!!TOPPAN」はCM、グラフィック、デジタルと統合的に制作を担当しております。CM※1では大泉洋さん、成田凌さんの掛け合いが見どころですので、ワンカットでの映像にナレーションや音楽を排除した引き算の手法でセリフを際立たせています。シンプルな構造だからこそ、CMの最後に入る「TOPPA!!!TOPPAN」のコピーも印象に残りやすいのではないでしょうか。
 大泉さんの「トッパンのこと印刷の会社だと思ってません?」といったセリフにある通り、DXや医療・ヘルスケア領域など印刷以外にもソリューションを展開されており、題材には困りませんので、CMでは視聴者に飽きられないようテーマごとに表現を工夫しつつ、長く続けていければと考えています。
 CMはユーモラスな会話劇ですが、OOHやブランドサイトのトップ画像などではスーツ姿の大泉さんと成田さんが「TOPPA!!!TOPPAN」というコピーを飛び越える瞬間を捉えたビジュアルで展開し、「突破」というイメージを力強くスタイリッシュに表現しています。統合的に手掛けることにより、それぞれのコンテンツの役割が明確化し訴求ポイントに注力できること、また企業の顔つきやトーン&マナーがそろうことが大きなメリットだといえます。
 本キャンペーンはBtoB企業の施策ですが、CMをきっかけに商談がスムーズに進むことが増え、リクルーティングとしても機能しているとお聞きしました。多くの方の心に届いているようで、非常にうれしく思っています。

※1 凸版印刷「すべてを突破する。TOPPA!!!TOPPAN 立ち上がり篇」
大泉洋が成田凌に「トッパンのこと印刷の会社だと思ってません?」と話しかけ、戸惑う成田に「突破する会社ですよ」などと畳み掛ける内容。第5弾まで放送され、同社の幅広い事業内容を紹介している

最先端技術を活用したバーチャル撮影で
高いクオリティーとワークフロー削減を両立

— 電通クリエーティブX、東北新社、ヒビノとともに「メタバース プロダクション」を推進されています
村山:映像業界は長きにわたって生産性、労働環境に課題を抱えており、制作スタイルやワークフローについての見直しや変革が求められています。こうした状況の改善に向け、当社では映像制作のプロセスの効率化と温室効果ガス削減を目指す「メタバース プロダクション」に参画することでPX(プロダクション・トランスフォーメーション)を進めたいと考えています。具体的な取り組みとしては、共同でPXサービスの基盤となる大型LEDスタジオを常設し、実装へ向けてのテスト撮影を重ねてまいりました。
 これまで撮影ごとに制作していた美術セットをCGで作り、LEDディスプレイにそれを投影するといったインカメVFX撮影の技法を活用することによって、クオリティーは担保しつつ、廃棄物量、スタッフ工数、美術費を大幅に削減することが可能で、CGの美術セットは保存できるため、さまざまな撮影に対応することができます。ロケの必要がなくなり、天候や時間に左右されなくなるため撮影時間も短縮されますし、タレントさんのスケジュールも押さえやすくなります。またリアルタイム撮影ですので、ブルーバック合成といったポスプロ作業も不要です。今後こうした手法が主流になっていくのは間違いありませんので、会社としての変革はもちろん、撮影・照明の技術スタッフだけでなく、全社員が業務に対する意識を改めねば生き残れません。技術やワークフローをいち早くアップデートすることで、当社の武器にしていきたいと考えています。

「studio PX」は映像の背景となる大型LEDやインカメラVFXシステムが搭載されており、従来の撮影手法と変わらないクオリティーでのバーチャルプロダクション撮影が可能。温室効果ガスの削減や制作プロセスの効率化など、さまざまなメリットがあるという

— 今後の取り組み、計画についてお聞かせください
藤森:プロダクションで長く仕事をしてきた私としては、デジタルを専門とする方と一緒に仕事を進める中で、「そういうアプローチがあるのか」という発見があります。発想の出発点が正反対でも「いい会社を作る」ための志は共通ですので、互いの強みを掛け合わせれば、これまでにない新たな形の会社になるのではとワクワクしています。
村山:新会社として立ち上がった年頭のあいさつで私が社員に伝えたのは、ありきたりですが「顧客満足度ナンバーワンの制作会社を目指す」ということでした。広告会社さん、クライアントさんといった顧客について広く深く理解するのはもちろん、視聴率やアクセス数といった統計データと売上データがひもづけられている現状を考えれば、制作会社としても「どれだけ売れたか」という費用対効果にもコミットする必要があると感じています。「いい作品をリリースした」という自己満足にとどまるのではなく、本当の意味で顧客を満足させられる制作会社を目指そうと。
 これには私の広告会社の営業時代の経験が背景にあります。とあるクライアントの社長から「CMを打ったらどれだけ売れるのか」という問いかけとともに、「メディアだけでなく、クリエーティブも含めすべて数字で解決できる」というお話をうかがいました。10年以上前の話ですので当時は理解できない部分もありましたが、あらゆるものがデータ化された今ではその意味がはっきりと分かります。デジタル領域ではコンバージョンにコミットすることが不可欠な昨今、映像やグラフィックの効果を検証しないわけにはいきません。今のところ、ここまで踏み込んだ制作会社は存在しないと思いますし、非常に高いハードルではありますが、統合的なプロデュースをする以上、それを越えて新たな価値を提供してまいりたいと考えています。