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Creator Interview 栗田雅俊氏(株式会社 電通)後編


嘘のないメッセージが希望を生み出す

2022年のクリエイター・オブ・ザ・イヤーに輝いた栗田雅俊氏。サントリーホールディングス「人生には、飲食店がいる。」、日清食品『カップヌードル PRO 高たんぱく&低糖質』、ユニクロの「母の日・父の日」をテーマとした新聞広告など数々の話題作を手掛けている。世の中の空気や人々の本音を捉え、多くの共感を集める広告作りについてお聞きした。
(取材:2023年8月3日)
【 CM INDEX 2023年9月号に掲載された記事を2回に分けてご紹介します。(第2回/全2回)】

栗田雅俊氏
株式会社 電通
CMプランナー/コピーライター
1981年岐阜県生まれ。主な仕事にサントリー「話そう。」「人生には、飲食店がいる。」『サントリー生ビール』、日清食品『カップヌードルPRO』、全国都道府県及び全指定都市『宝くじ』『ロト』『クイックワン』、ユニクロ「母の日・父の日」、パートナーエージェント「ドロンジョとブラック・ジャック」。TCC賞グランプリ、ACCゴールド、ADC賞などを受賞。
歌とアニメで展開する日清食品『カップヌードル PRO 高たんぱく&低糖質』のCMが好評です
 2021年4月の商品発売時から担当させていただいています。たんぱく質15g配合で糖質は50%オフ、食物繊維も豊富なのに『カップヌードル』のおいしさそのままという画期的な商品で、とても特長が多いのですが、このCMではその要素をひとつ残らず入れ込んでいます。
 CMソングを聞いていただくとおわかりのように「♪俺は最近すごく運動不足」「♪そんなあなたに カップヌードルPRO」など、冒頭から最後までわかりやすい商品提案なんですね。けれど、人気動画クリエイターの“はじめまして松尾です”さんのシュールなアニメーションとシンガーソングライター・眉村ちあきさんの本格的な歌声が、商品を伝えながらも愛されるエンターテインメントにしてくれています。さらに、CMには商品説明とはあまり関係のない要素もかなり混ざっています。なぜかネズミがヒヨコに取り調べをしていたり、なぜか最後にトラックに乗り込むシーンが継続されていたり(笑)。意味がわかりすぎない余白を残しておく方が視聴者の興味を引きつけられるのではと。“わかる”と“わからない”の絶妙なバランスが本シリーズが好評をいただけている理由のひとつではないでしょうか。
「母の日・父の日」をテーマとしたユニクロの新聞広告が国内外で話題となりました
 ユニクロの母の日ギフトを話題にするためにチームで議論していて、これまで母の日広告というとギフトを送る側の視点が大半で、お母さん自身の気持ちはあまり描かれていなかったことに気付きました。そこからお母さんの本音を描いた新聞を作ろうと企画が定まり、紙面をめくるたびに漫画『あたしンち』のお母さんが「母の日のプレゼントは、いらないからね。本当に。」という言葉とは裏腹に、どんどんにじり寄ってくるという4連広告になりました。どこか映像的な新聞の見せ方には、これまでのCMプランナーとしての経験が役に立ったかもしれません。
 2年目となる今年は漫画『ちびまる子ちゃん』のお母さんとまる子が登場する新聞を展開しました。離れた場所に掲載された母娘それぞれのモノローグ広告ですが、間の紙面を抜き取ると「ちゃんと伝えなきゃね、」「ありがとうって。」などと左右の紙面の言葉がつながり、母娘共通の思いだとわかる仕掛けです。掲載後は国内のほか中国や韓国など海外でも大きな反響があり、親子の普遍的な感情が国境を越えて共感されたのはうれしい驚きでした。
広告を作る上で、大切にされている考え方についてお聞かせください
 東日本大震災の際、CMが全部ACジャパンへ差し替えになったことにすごく落ち込んで。そのとき、CMって流れること自体がこの世界が前進している証拠で、ある種の希望を届けていたのかもしれないと思ったんです。マス広告にはそういう役割があるなと。また広告作りではできるだけ嘘をつかず、愛らしく表現するよう心掛けています。ブランディングって世の中に「こういうつもりで向き合います」と宣言する未来への約束ですよね。約束は嘘をついちゃいけないし、愛されなきゃいけない。企業やブランドの“らしさ”とアイデアを掛け合わせ、本当のことをチャーミングに伝える広告をこれからも作れたらと考えています。
その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。