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Creator Interview 村田俊平氏(株式会社 電通)後編


コアにあるアイデアが人の心を動かす

オダギリジョー出演のリクルート『Airペイ』、木村拓哉と芦田愛菜、松本人志と山田孝之がそれぞれ共演する『タウンワーク』、『Airワーク 採用管理』、映画のエンドロールをモチーフとしたEMシステムズなど数多くのヒットCMを手掛ける村田俊平氏。話題を集める広告作りや、長く愛されるCMを作る上で大切にされていることなどをお聞きした。
(取材:2023年3月3日)
【 CM INDEX 2023年4月号に掲載された記事をご紹介します。】

村田俊平氏
株式会社 電通 第3CRプランニング局
CMプランナー
2009年電通⼊社。CMプランナー。専⾨はテレビCMの⼤型キャンペーンからウェブムービーなど、動画全般のコミュニケーション、および動画を中⼼とした統合ディレクション。クリエーティブ局配属後は、福岡の電通九州や、オーストラリアのBWM Dentsu Melbourneへの出向など何かと島国へ。趣味はあんみつめぐりと英語。猫好きの猫アレルギー。
今年2月度のCM好感度で首位に輝いたタウンワークやAirワーク 採用管理のCMが好評です
 CMの企画を考える際には出演するタレントさんの意外な一面や、誰も見たことがないけれど多くの方が見てみたいであろう姿を表現することを大事にしています。リクルート『タウンワーク』のCMでは木村拓哉さんの起用に当たり、格好良いのはもちろんですがコミカルな一面や、ときには誰かにツッコミを入れられてしまうといったちょっと情けない表情も披露いただければと考えました。優等生的なイメージの強い芦田愛菜さんについてはコメディエンヌとしての天才少女らしさにこだわってセリフやストーリーを考えています。
 同社の『Airワーク 採用管理』のCMでは誰も見たことのない松本人志さんの描き方が課題でした。お笑いタレントとして面白いトークをする普段の姿ではなく、俳優・松本人志としてCMに登場したら新しく見えるのではないか。そんな思いから本作では心優しい印刷会社の社長を演じていただき、松本さんがお笑いの世界に入らなかった世界線のストーリーを展開しています。
 このCMは松本さんと社員役の山田孝之さんとのアットホームコメディのようなコミカルな掛け合いが中心ですが、感動的なセリフや心温まる会話なども意識的に散りばめています。タウンワークのCMも開始当初は「タウンワークって何?」と木村さんが芦田さんに尋ねるものでしたが、最近はアルバイトの“あるある”や「バサキ」といった若者言葉をテーマとしています。展開に変化を持たせることで飽きずに楽しんでいただけますし、物語の幅が広がりシリーズとしての懐がさらに深くなる。こうした柔軟性があるとシリーズCMは長続きしやすいように思います。シリーズCMって世の中にある程度愛されれば、当初の設定から多少外れたことをしても視聴者がついてきてくれるんですよね。愛着や「好き」という感情の貯金があるから「知っているあのCMが始まった」と無条件で見てもらえる。それがシリーズCMの一番の強みではないでしょうか。
直近のお仕事についてお聞かせください
 医療関連業務をサポートするシステムの開発・販売を行うEMシステムズの初の企業CMを担当しました。「凡庸な広告にはしたくない」という広告主の意気込みに応えたいと思うと同時に、医療系のBtoB企業ですので行き過ぎた表現にならないよう慎重に取り組まなくてはと感じました。そんなときに磯島拓矢CDが「医療・介護従事者は人々を支えてくれるけれど、その医療・介護従事者を支えるのは誰だろう」というコンセプトを提示してくださいました。同社の事業の本質を捉えたこの言葉を起点に、病気の治療や介護が医療関係者のチームワークで成立していることを表現できないか。そうした企画を練る中、ある映画を見ていたときに映像作品も医療現場でのケアにも大勢の人が関わっていると気付いたことから、林遣都さん演じる骨折した青年を支えた大勢の医療関係者の役職と名前をエンドロールで映していくCMを制作しました。放送後はSNSで「私の職種もあった」「よくぞ言ってくれた」などの医療関係者と思われる方からの好意的な感想も多く、本当にうれしかったです。
 今年1月開始の森永製菓『ラムネ』の受験生応援CMはブドウ糖を90%含むラムネが集中力を高めるアイテムとして注目されていることにフォーカスしたものです。受験勉強でおなじみの“赤シート”をモチーフにしようと思いついたものの、集中するあまり周囲の余計なものが意識から消える感覚の描き方が難題でした。最終的にはモノクロと赤を組み合わせた線画アニメという手法を採用し、一般的なフルカラーのアニメCMとは一線を画す新しい見え方となりました。約7カ月をかけて作り込んだことも奏功し、公開後はSNSで「感動した」「斬新な発想に驚いた」などと若年層を中心に大きな反響があり、商品の売り上げも好調とお聞きしています。
 これらは出稿量の多いCMではありませんが、企業やブランドが伝えたい思いに向き合い、アイデアの力で人の心を動かせたことはCMプランナー冥利に尽きると思っています。電通九州での経験や、数年前にオーストラリアのBWM Dentsu Melbourneで広告作りをしていた頃を振り返ると、言葉が通じなくてもどんな制約があっても、企画のコアさえあればなんとかなる。アイデアが発見できれば、それを世の中に愛される表現に昇華できるようクライアントや制作チームで協業すればいい。セリフの言い回しや小ネタなどディテールを考えることも好きですが、シリーズCMでも単発CMでも企画の真ん中にアイデアがあることの大切さを常々感じています。
その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。