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Creator Interview 村田俊平氏(株式会社 電通)前編


コアにあるアイデアが人の心を動かす

オダギリジョー出演のリクルート『Airペイ』、木村拓哉と芦田愛菜、松本人志と山田孝之がそれぞれ共演する『タウンワーク』、『Airワーク 採用管理』、映画のエンドロールをモチーフとしたEMシステムズなど数多くのヒットCMを手掛ける村田俊平氏。話題を集める広告作りや、長く愛されるCMを作る上で大切にされていることなどをお聞きした。
(取材:2023年3月3日)
【 CM INDEX 2023年4月号に掲載された記事をご紹介します。】

村田俊平氏
株式会社 電通 第3CRプランニング局
CMプランナー
2009年電通⼊社。CMプランナー。専⾨はテレビCMの⼤型キャンペーンからウェブムービーなど、動画全般のコミュニケーション、および動画を中⼼とした統合ディレクション。クリエーティブ局配属後は、福岡の電通九州や、オーストラリアのBWM Dentsu Melbourneへの出向など何かと島国へ。趣味はあんみつめぐりと英語。猫好きの猫アレルギー。
CMクリエイターとしてのキャリアをどのようにスタートされたのでしょうか
 クリエーティブ局配属となるも思うように面白いCMを作れず悩んでいた頃、電通九州がクリエーターを募集しているという話があったんです。九州はCM大国として有名でしたし知っている先輩も何人かいましたので、入社5年目の半ばから福岡にある電通九州に出向しました。九州では東京にいた頃よりも仕事の領域が広がり、成功も失敗も自分の責任という状況の中で試行錯誤を繰り返したことで、CMを企画するための基礎的な型が身に付いたと思います。決して順風満帆ではなかったのですが、出向した3年間では宮崎県小林市の移住促進PRムービー 「ンダモシタン小林」、自分でディレクターも担当した学習塾・英進館のCM「歩く男」篇で広告賞をいただくなど、手応えのある仕事も増えていきました。
 東京に戻ってからはPARTYの中村洋基CDのもとでリブセンスのアルバイト求人サイト『マッハバイト』の広告を担当しました。2017年当時、バンパー広告は誕生したばかりで「まだ誰もここにアイデアを盛り込んでいないから、勝ち目がある」と中村CDに言われたんです。その言葉をきっかけに発案し、動画の構造自体がマッハである点を生かしてさまざまなアルバイトを超高速で描く6秒動画を展開したところ、SNSで大きな話題となりました。単なるバズに留まらずマッハバイトというサイト名の認知拡大にも貢献し、メディア特性とアイデアがハマった成功事例として印象に残っています。
転機となったお仕事についてお教えください
 その後いくつかCMを作ったのですが、単発では好評でもシリーズ化せず短期間で終わることが続きました。ひとつの遊びを考えるのが単発CMだとしたら、シリーズCMは公園のようなもので、何かが起きる“場”として面白くないと長続きしない。そうした発想の違いがつかめずにいた頃、CMプランナーとしての仕事の転機となったのが篠原誠CDに誘っていただいた『WOWOW』と、山本渉CDのもとで担当したリクルート『Airペイ』のCMでした。WOWOWは柳楽優弥さんと有村架純さん演じるカップルのやり取りに「♪WOWOWに入ろっかな」という歌の要素が加わったシリーズCMで、決まったフレームの中で面白い企画を考えていくというシリーズCMの王道を学ぶことができました。
 一方、Airペイは珍しいタイプのシリーズCMで、ストーリーそのものがフレームとなり、そこで起きる出来事が毎回変化するという水戸黄門やアンパンマン的な構造になっています。というのもオリエン時にはシリーズ展開すると決まっていなかったので物語が続く可能性を考慮せず、1作目では「骨董品屋の店主のもとにアラブの富豪が現れるも、現金しか使えないと聞いて帰ってしまう」という単発CMとして面白い作品を作ったんです。その後キャッシュレス化の追い風もあって2作目を作ることとなり、骨董品屋を軸に物語を回すのは難しいなどと話し合う中で「オダギリジョーさん演じる店主がキャッシュレス決済に対応できず客を逃して損をする」というストーリーをフレーム化する企画が誕生しました。
  「じゃあいいです」というセリフは私が何気なく書いたものですが、山本CDにこの言葉が面白いと褒めていただき、シリーズ共通のオチとして使用することになりました。また演出の中島信也さんが「じゃあいいです」を面白く言えるイタリア人がいると推薦してくださったのが1作目から起用しているパオロさんで、いまではAirペイのCMに欠かせない存在です。私はセリフを書いただけでこのフレーズが鉱脈だとは気付けなかったのですが、おふたりの力によって何倍も面白い形で世に出すことができました。このように自分ひとりではなく、周囲の方と協業しながら力を発揮できるCMプランナーになりつつあることが、自身のキャリアの中で最も貴重な財産だと感じています。
その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。