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電通CMクリエイター 見市沖のこれからのCMの話をしよう【明円卓氏・前編】第2回/全2回


手法にとらわれずフラットに課題を解決

電通のCMクリエイター・見市沖氏がCM制作の最前線で活躍するクリエイターと、これからのCMのあり方を探る連載企画。第4回の対談相手は、過去にKDDI『au』の「意識高すぎ!高杉くん」シリーズといったCMを手掛けたほか、アーティストのMV、コーヒー店『JANAI COFFEE』の運営など、幅広い領域のコミュニケーションを得意とする明円卓氏。前編では入社当時のお仕事や独立の経緯、今後のテレビCMとデジタルCMの捉え方などについてうかがった。(収録:6月18日)
【 CM INDEX 2021年8月号に掲載された記事を2回に分けてご紹介します。(第2回/全2回)】
— 1行1枚絵を目指す
明円:最近は企画を考えるときに「1行1枚絵」を大事にしているんです。Duolingoもそうだし、コーヒー屋のふりをしたバーとか、ビデオのないミュージックビデオとか。
見市:僕も1枚絵の企画を結構やるんだけど、そういう作り方をしない人もいるよね。
 例えば『ポカリスエット』の「でも君が見えた」篇。あれは1枚絵じゃ作れなくて、映像のクラフトが圧倒的にずば抜けていると思う。企画の立て方によって、アウトプットとなる出口の技巧が全然違う。明円の作るものがキャッチーなのはそういうことなのかな。最近の仕事で、これ面白かったみたいなのはありますか。
明円:独立前から音楽の仕事が多いんですが、そのひとつが2019年から続けている「#FOMAREの実験」※1という企画です。FOMAREという新人アーティストの曲をどうやったら聞いてもらえるんだろうと考えたもので、渋谷駅の地下コンコースに1000枚の手紙を貼って、その中の1枚だけに新曲を聴けるQRコードが同封されているというプロジェクトをやったんです。
 手紙には「新曲はSNSにシェアするのも、フリマアプリやオークションサイトで売るのも、自分だけで楽しむのもOK。受け取った人に、この曲の行方を委ねます」と書いて、新曲がどうなってしまうのか誰にも分からないという企画です。最終的にその曲が行方不明になったことで曲の価値がめちゃくちゃ上がったんですよ。「どんな曲だったんだろう」って逆に注目されて。
見市:その話題の着火点はなんだったの?
明円:メンバーにライブの中で告知してもらって、ライブが終わった後にファンがダッシュで駆けつけた形ですね。
見市:結局その曲は発売しなかったの?
明円:当初は発売する予定はなかったんですけど、最終的にはご要望に応えてという理由でリリースしました。
見市:ファンが盛り上がっただけじゃなくて、その曲の中身が分からないことに対して、ネットがザワついたってこと?
明円:そうですね。まだ僕と出会う前でしたけど、実は僕の彼女もファンじゃないのに偶然その手紙を手に入れたひとりで…(笑)。当時どんな曲か楽しみにしていたと言っていました。
見市:そうなんだ(笑)。広告って商品やブランドの価値を言い当てて、それを世の中にどんなふうに伝えるかが基本線だよね。コピーライティングしてプランニングしてって。明円がやってることは全然違う。ユニークな仕掛けがあるというか、言葉が適切か分からないけれど、楽しそうな学園祭みたい。根が明るくて人が周りにいる感じがするね。
※1. 2019年11月22日、渋谷駅地下コンコースに1000枚の手紙が貼り出され、そのうちの1枚にスリーピースロックバンド・FOMAREの新曲を聴くことが可能なQRコードが同封された。2020年には第2弾を実施。
— “マスCM”という概念を見直しメディアや予算の捉え方を柔軟に
見市:漠然とした質問だけど、いまCMをどう捉えている?
明円:接触するメディアが分散しているから、CMが絶対的な広告手段ではなくなってきたんでしょうね。広告費の配分も変わってきましたし。見市さんはどう思いますか。
見市:広告という意味では、CMはものすごく機能しているんじゃないかな。メディアの種類が増えて分散しているがゆえに、逆にテレビの価値が上がっている気がする。
明円:テレビCMのことを“マスCM”って呼ぶのをやめたらいいのにって思うんですよね。デジタルCMもテレビCMと同じような態度で作った方がいいんじゃないかと。日常の中で、テレビCMと同じくらい目にする広告はデジタルにもありますし。
— テレビCMは何度も見たときに「好き」と感じることが大切
見市:態度も予算もかなり違うけれど、それと同時にテレビとデジタルではヒットする条件が異なるから難しいね。SNSではちょっとした仕掛けや事件性があって、誰かに言いたくなるコンテンツだと一気に拡散する。一方、テレビCMの場合は何度も偶然見たときに「なんだか好き」って感じることが大切。だから15秒の中で描く物語の濃密さやクラフトが重視されるんじゃないかな。
明円:テレビとデジタルでは受け止められ方が違いますよね。最近、個人的に“嘘マス”って呼んでるんですけど、マスっぽい仕上がりのデジタルCMに興味があります。
見市:マスのような印象を与えるデジタルCMということ?
明円:そうです。例えば去年、藤本美貴さんが母親役で出演されていた『Lovegraph』※2のデジタルCMはマスに近いと思う。
見市:インサイトを提示して具体例で解決という構造を丁寧に描いていて、パブリックな印象や安心感があるね。
明円:クライアントもクリエイターも固定概念にとらわれず、課題に合わせてメディアを選べばいいですし、制作費に対する考え方ももう少し柔軟になるといい。メディアも社会環境も複雑な時代だからこそ、領域を自由に飛び越えてなんでも相談に乗ることができる存在でいたいですね。
※2. 出張撮影サービス『Lovegraph』のデジタルCM。七五三の写真をどこで撮るか悩む藤本美貴が晴れ着姿の子どもたちに相談する内容で、2020年9月に公開された。伊勢田世山氏が演出を担当している。
明円卓氏 株式会社kakeru クリエイティブディレクター/プランナー
2014年より電通にてCMプランニングやコピーライティングを軸に統合コミュニケーションプランナーとして活動。2020年7月に電通を退社後、kakeruを創業。CHOCOLATEにも所属。過去の主な仕事に「意識高すぎ!高杉くん」シリーズ、「フワちゃんリモートCM作ってみた」など。恵比寿のコーヒー屋『JANAI COFFEE』の代表も務める。

見市沖氏 株式会社 電通 zero クリエーティブ・ディレクター/コピーライター/CMプランナー
2006年電通入社。近作はタイムツリーはじめました、ポッキー、パズドラなど。TCC新人賞、ACC賞、国際PRゴールデンアワードなど受賞多数。「世界に愛されるブランドをひとつでも多く増やす」がモットー。
その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。