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Creator Interview 斎藤武一郎氏(株式会社 リヴァンプ)後編


クリエイティブの力で経営課題を解決

企業の経営支援などを行う株式会社 リヴァンプの斎藤武一郎氏はコンサルタントとして事業再生に取り組むほか、CMクリエイターとしても活躍を見せている。『カメラのキタムラ』のCMで2020年度のTCC新人賞を受賞するなど、優れたクリエイティブを世に送り出している同氏に、経営課題の解決にCMを活用する狙いや広告制作の際に重視していることなどをお聞きした。
(収録:10月16日)
【 CM INDEX 2020年11月号に掲載された記事を2回に分けてご紹介します。(後編)】
— 広告を作る上で大切にしていること
 CMを成功させる最大の要因はやはり“クリエイターとタレントのキャスティング”だと思います。吉田大八さんとは私がユナイテッド・シネマのCOOに就任した頃からのお付き合いです。異例のヒットを続けていた映画『桐島、部活やめるってよ』の上映延長について大宮の映画館でお話をしたのが恐らく最初ですね。その後福部明浩くんが設立したcatchと業務提携したこともあり、彼と大八さんと一緒にTravel.jpやテイクアンドギブ・ニーズ、エドウインなどのCMを作るようになりました。「空の最安値」をコピーに展開したTravel.jpのCMでタクシーの運転手を演じた前野朋哉さんは“桐島”で神木隆之介さんと同じ映画部員役だった役者さんです。出稿量も限られていたのですが、幸いなことに好評をいただき2014年のACCでシルバーを受賞することができました。
 タレントの選定については、人気の変動も早いのでジャンルを問わずエンタメの動向を常にキャッチアップするよう心掛けています。広く名が知られているタレントはせいぜい数百人で、暗記できる程度の人数ですし。とはいえCMのキャスティングとなると予算や競合、企業のネームバリューの関係もあり、毎回頭を悩ませます。ですが大八さんや福部くんの実績とクリエイティビティがあるからこそ、中小企業のCMでも人気の高い俳優やアイドルにオファーできるのだと思っています。「あの人なら、うちのタレントの良さを引き出してくれる」という信頼感がベースにあるんですよね。どんなに私が経営の知見を持っていても、クリエイターである彼らの力がなければ良い広告は生み出せません。いわば広告は経営者とクリエイターの化学反応。広告もビジネスも“誰と組むか”が成否を分けると考えています。
— これからの広告業界について
 コロナ禍を経て経済的な面だけでなく情報格差も顕著となった一方で、マスに情報をリーチさせるメディアとしては現在もテレビCMが圧倒的に効くと思います。ただメディア系企業の再編が進むことは間違いないので今後、私自身はCMだけでなくコンテンツ制作などの事業に携わる機会が増えるかもしれません。
 今はあらゆるものがコモディティ化する世の中です。モノづくりやデジタル技術でさえコモディティ化を避けられない。その環境下で、クリエイティブは事業の差別化において欠かせないのではないでしょうか。これまで映画館やアパレル、小売などさまざまな企業の事業再生に広告を活用してきた経験から、私は「経営×クリエイティブ」を自身のビジネスのテーマとしています。クリエイティブとは監督やプランナーといった広告制作者だけのものではありません。本来は経営トップ層も広告表現に責任を持ち、達成すべきミッションの設計や広告効果の検証に取り組むことが不可欠だと考えます。またこれまで多くの広告会社は消費財やモバイル、自動車メーカーなどを主領域としていましたが、今後はリテールやデジタルサービス、IT関連などのD2C企業の広告コミュニケーションが勢力を拡大していくと思います。D2Cの広告はROIが可視化しやすいので「経営×クリエイティブ」という側面はますます重視されるはず。これからも企業経営やマーケティング、クリエイティブという視点から事業の価値を最大化する広告を作っていけたらいいですね。
斎藤武一郎氏 株式会社 リヴァンプ 取締役 Chief Marketing Officer
博報堂、アクセンチュア、米国でのCG会社起業を経て現職。リヴァンプでは主に事業再生を担当すると同時に、テレビCMなどのクリエイティブも担当。一橋大学、東京大学大学院卒。現在、キタムラ 執行役員副社長を兼任。
その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。