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Creator Interview 斎藤武一郎氏(株式会社 リヴァンプ)前編


クリエイティブの力で経営課題を解決

企業の経営支援などを行う株式会社 リヴァンプの斎藤武一郎氏はコンサルタントとして事業再生に取り組むほか、CMクリエイターとしても活躍を見せている。『カメラのキタムラ』のCMで2020年度のTCC新人賞を受賞するなど、優れたクリエイティブを世に送り出している同氏に、経営課題の解決にCMを活用する狙いや広告制作の際に重視していることなどをお聞きした。
(収録:10月16日)
【 CM INDEX 2020年11月号に掲載された記事を2回に分けてご紹介します。(前編)】
 ※後編は12月1日(火)に公開
— カメラのキタムラのCMでTCC新人賞を受賞されました。率直な感想をお聞かせください
 新卒で入社した博報堂を辞めて20年後に新人賞をいただくとは、夢にも思いませんでした。ひとえに監督の吉田大八さんをはじめ、制作に携わってくれたスタッフの力によるものだと思います。博報堂ではクリエイティブ職ではなく、営業としてプレイステーションなどのCMを担当していました。その後アクセンチュアでコンサルティングを経験し、ハリウッドでのCG制作会社の起業などを経て、2009年からリヴァンプで企業の経営支援を行っています。特にこの10年はユナイテッド・シネマなどのさまざまな支援先企業にCOOとして関わりながら、経営改革や事業再生に取り組むことがメインです。その一環として『カメラのキタムラ』などを展開するキタムラに2017年から副社長として参画しています。
 当時、キタムラはCMを有効活用しているとはいえない状況でした。そこで着任後はすぐにCMを含めたマーケティング全般のてこ入れを行い、最初に手掛けたのが“写真入り年賀状”のCMです。年賀状の準備が毎年12月後半にずれ込むという傾向に注目し、「まだ間に合う」というメッセージで年末にCMを集中投下しました。このCMのROI(投資対効果)は高く、社内でCMの効果性が見直されるきっかけとなりました。CMを新たに展開する場合はまず小規模なエリアを限定して検証し、ROIが合えば全国展開するというパターンが多いですね。
— 経営支援においてCMを活用する狙いとは
 私自身はクリエイティブの専門家ではありませんが、CMには3タイプあると思っています。ひとつ目はイメージCM。大手企業、特に消費財などのメーカーが大規模に展開するようなブランディングやイメージアップに向けた広告で、クリエイターが力を発揮しやすいタイプですね。ふたつ目は販促型CMで、チラシの代替でもあります。最近は既に市場にあるものをより安く提供する価格ディスラプション的な訴求をよく目にします。3番目は説明型CM。提供する価値がニッチなため、ある程度の説明が必要な商材のCMです。これはCMの中で説明が多くなるのでクリエイターが力を発揮する余白が相対的に少なくなります。
 私たちが担当しているベンチャーや中小企業のCMは販促型と説明型が中心です。キタムラが展開するカメラの中古買取などはまさに説明型で、広告会社のプランナーが腕を振るう余地がない。ですので、私と吉田大八監督が直接やり取りしながら制作するというスタイルを続けています。大八さんにはサービス説明が中心の企画でも必ず面白くしてくれるという絶大な信頼を置いています。現在放送中のCMではどこか不穏な雰囲気の中、購入を迷い続ける安田顕さんをコミカルかつ哀愁漂う存在として描いています。サブキャストもあえて有名人を起用せず、映画的な仕上がりを意識しました。特に中小企業のCMを作る際には、優秀なスタッフと組むことが欠かせません。優秀なクリエイターがいることでタレントとの出演交渉の際の武器となり、キャスティングの幅も広がるので、最終的に効果の高い広告表現を生み出すことができる。経営支援の観点からも、クリエイターのアサインメントの重要性を常に感じています。
― キタムラが運営するスタジオマリオ、しまうまプリントのCMについてお聞かせください
 『スタジオマリオ』のCMは“撮影料半額”という販促的な内容にもかかわらず、監督の柴田大輔さんの力量でエンタメ性の高い表現となりました。柴田さんは人柄が本当に素晴らしく、そのことがCMにも表れています。七五三で子どもの成長を祝うというテーマにはぴったりでした。また柴田さんは『本麒麟』などの“売れるCM”を作る名手で、幅広いジャンルで活躍する職人肌の監督だと思っています。若手では『jms』の連続10秒ドラマを手掛けた平田大輔監督に注目していて、キタムラのグループ会社『しまうまプリント』のCM(12月上旬オンエア予定)を担当いただきました。年賀状プリントとフォトブックを訴求する内容ですが、ブランドイメージを上げる表現手法が問われるので、福部明浩くんにクリエイティブディレクターと企画、コピーをお願いしています。
 福部くんは博報堂の同期で、これまでにもTravel.jp、エドウイン、ファミリーマートなどのCMを一緒に作ってきました。彼が得意とするのは『淡麗グリーンラベル』や『きよら』のCMに象徴される“絵本的世界観”だと思います。絵本的な世界観でありながら、マーケティングメッセージもきちんと織り込む手腕はさすがとしかいいようがない。今回のしまうまプリントのCMでは王子様のような佇まいの菊池風磨さんがお尻を“プリンッと”させるダンスで年賀状プリントをアピールしています。福部くんは企画段階からオチを逆算できているので、いつも1案しか出さないんですよね。せめて2案は欲しいとよく言うんですが(笑)。恐らく最初からアイデアのずっと先にある完成図を見越しているので、代替案を考えたとしても最善策にはなりえないのでしょうね。だからこそクオリティーの高い作品ができるのだと思います。
斎藤武一郎氏 株式会社 リヴァンプ 取締役 Chief Marketing Officer
博報堂、アクセンチュア、米国でのCG会社起業を経て現職。リヴァンプでは主に事業再生を担当すると同時に、テレビCMなどのクリエイティブも担当。一橋大学、東京大学大学院卒。現在、キタムラ 執行役員副社長を兼任。
その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。