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電通CMクリエイター・見市沖のこれからのCMの話をしよう 前編(第1回/全3回)


時代の空気を捉えたCMが共感を呼ぶ

電通のCMクリエイター・見市沖氏がCM制作の最前線で活躍するクリエイターと、これからのCMのあり方を探る連載企画がスタート。第1回の対談相手は、「あらゆる社会の変化と挑戦にコミットすること」をミッションに掲げ、クリエイティビティを軸に企業をサポートするThe Breakthrough Company GOの三浦崇宏氏。前編ではCMの役割や、コロナ禍において効果を発揮するCMについて語っていただいた。
(収録:7月16日)
【 CM INDEX 2020年9月号に掲載された記事を3回に分けてご紹介します。(第1回/全3回)】
 ※第2回、第3回は9月25日(金)に公開
—CMはクライアントの課題を15秒の映像に変換する謎解き
見市:まず三浦さんに初回のゲストをお願いした理由から話してもいいですか。
三浦:僕が最初なんですね。びっくりしました。
見市:昨年お会いしたときに三浦さんがCMについて熱く語っていらっしゃったのがすごく新鮮で。GOといえばCM制作よりも事業開発やPRのイメージが強かったので、今回はあえて三浦さんと真正面からCMの話をしてみたかったんです。
三浦:CM、めちゃめちゃ好きですよ。あまりそう思われてないみたいですけど(笑)。そもそも広告業界を目指したのもTUGBOATや佐々木宏さんに憧れたのがきっかけだったし。CMって要するに謎解きじゃないですか。クライアントの課題があって、それを生活者が面白いと感じる15秒の映像に変換するという難題。そこに取り組む知的作業には圧倒的なリスペクトがありますし、尊敬するクリエイターも数え切れないほどいらっしゃいます。
見市:特に印象に残っているCMはありますか。
三浦:岡康道さんたちが手掛けたアトランタオリンピックのCM※1ですね。会社員役の柳沢慎吾さんが牛丼屋の隅にあるテレビでオリンピック中継を見ているうちに中嶋朋子さん演じる店員と心を通わせるストーリーです。
 オリンピックの面白さを伝えるなら、アスリートの身体能力を見せるCMでも良かったはず。でもこのCMでは「オリンピックがなければ、平凡な夏でした。」というコピーで、オリンピックを“人生を非日常に変えるきっかけ”として捉え直しているんです。ある現象を別の視点で見ることによってその価値をガラッと変えてしまっている。広告のど真ん中をついたCMで、何度見ても大好きです。
見市:ストーリーテリングとかクラフトじゃなくて、オリンピックの価値転換をするという見立てが優れていると思われたんですね。
三浦:もちろんその転換に説得力を持たせるには、ストーリーもクラフトもコピーも役者の力も必要なので、どこを切り取っても素晴らしいCMだと思います。
— 生活者の価値観が変化、ステータスからスタンスへ
見市:CMの効果を疑問視する声も耳にしますが、三浦さんはCMの役割や意義をどのように考えていますか。
三浦:当然、CMは効きますし、広告の主役は今もCMだと思っています。というのもメディアが多様化して細分化されたことで、テレビ番組やウェブメディアを含むあらゆるものの影響力が落ちているんですよね。だから、テレビ番組とCMが結果論として最も影響力の強いメディアということは変わっていないと思います。
 その上でCMがなぜ有効かというと、あらゆる商品やサービスがコモディティ化したことで性能や価格といったステータスに差がなくなっているから。質も価格も同じ商品に囲まれた生活者はブランドの姿勢やスタンスに共感できるものを選ぶことになる。生活者の選考がステータスからスタンスへと変化しているということですね。このスタンスを大きなインパクトを持って生活者に示すのがCMの役割です。
見市:ステータスからスタンス。
三浦:あとは顧客の拡大ですね。マーケティングは顧客の刈り取りと拡大でできているんです。顧客の刈り取りまではデジタルマーケティングで達成できますが、それはただ顕在化された欲望を追いかけているにすぎない。
 スポーツカーを例にすれば、すでに欲しいと思っている人に買ってもらうならデジタルマーケティングで十分です。けれど、スポーツカーを買ったことで得られる人生の喜びとか日々の充実とか生活者自身が気付いていない欲望を喚起するという意味では、ターゲットを限定せずに伝えることができるCMの方が圧倒的に有利です。顧客や市場をダイナミックに拡大するにはテレビの力が欠かせません。
見市:それはテレビの特性も影響していますよね。テレビはネットと違い生活者が受け身で接触するメディアだからこそ広告的な情報が受け入れられやすく、潜在的な欲望にリーチしやすいです。
三浦:だからこそCMは面白くなくてはいけない。知らないもの、もしかしたらいらないかもしれないものを紹介して「すごく素敵なものですよ」と伝えるには、表現が面白くないと絶対に振り向いてもらえない。ありきたりな表現で商品の特徴を説明しているだけのCMは、誰の心も動かさないと思います。
※1. 日本民間放送連盟『オリンピック民間放送キャンペーン』のCM(1996年7月開始)。岡康道氏、多田琢氏が企画、岡氏と小松洋支氏がコピーを担当した。
三浦崇宏氏 The Breakthrough Company GO 代表取締役 PR/CreativeDirector
2007年株式会社博報堂入社、マーケティング・PR・クリエイティブの3領域を経験、TBWA\HAKUHODOを経て2017年独立。Cannes Lions、PRアワードグランプリ、ACC賞など受賞多数。近著に『言語化力』(SBクリエイティブ)、『人脈なんてクソだ。』(ダイヤモンド社)。「表現をつくるのではなく、現象を起こすのが仕事」が信条。

見市沖氏 株式会社 電通 クリエーティブディレクター/コピーライター/CMプランナー
2006年電通入社。近作はタイムツリーはじめました、ポッキー、パズドラなど。TCC新人賞、ACC賞、国際PRゴールデンアワードなど受賞多数。「世界に愛されるブランドをひとつでも多く増やす」がモットー。
その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。