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Creator Interview 花田礼氏(株式会社 電通)


驚きのある構造で心を動かす

今田美桜を起用したIndeed『タウンワーク』や、コカ・コーラ社の伝説的なCM『I feel Coke』とコラボした日本マクドナルド『ビッグマックR』、平野紫耀出演の池田模範堂『ムヒ』などのCMをはじめ、幅広い領域で数々の話題作を手掛ける花田礼氏。直近のクリエイティブワークの狙いやSNSを起点とした広告作りについてお話をうかがった。
(取材:2025年7月8日 写真:長谷川大)
【 CM INDEX 2025年8月号に掲載された記事をご紹介します。】

株式会社 電通
第6CRP局 Creative KANSAI部
クリエイティブディレクター/プランナー
花田 礼氏

2014年電通入社。近年の主な仕事にマクドナルド「夜マックアニメ」「いまだけダブチ食べ美」「夜の坂道」「大人と公園」、サントリーBOSS「世界のTEA」、池田模範堂「平野紫耀×ムヒ」、タウンワーク「タウンワークのうた(今田美桜出演)」、ソフトバンク「響く人には響くニュース」、USJ「ユニ春」「ユニハロ」、カップヌードル「9分割CM」、YOASOBI「アドベンチャー」MVなど

“究極の引き算”でインパクトを生み出す

今田美桜さん起用のIndeed『タウンワーク』など斬新な表現のCMが注目を集めています
 広告を作る際はストーリーや表現よりも“構造”の部分から考えることが多いです。骨組みの段階で違いを作る方が効率的にインパクトを生み出せる感覚があり、そこに面白さを感じています。タウンワークのCMは「バイトといえばタウンワーク」とCMの視聴者に伝わるような分かりやすいCMにしたいというクライアントの意向を受け、“究極の引き算”という発想で企画を組み立てました。オチや起承転結はなく、音楽は著作権フリーの『聖者の行進』、背景や衣装はブランドカラーの黄色で統一。すべてをベタに振り切ることで相対的に目立つことを意識しています。ここまで要素をそぎ落として大丈夫かという思いも多少ありましたが、撮影現場で今田美桜さんの表現力を見て「これはいけるかも」と思いました。放送後は「今田さんがかわいい」「このCMを見ると赤ちゃんが泣き止む」など好意的な反響をいただいています。
 構造の新しさという点では『SoftBank』のCMも好評でした。坂東龍汰さんと乃木坂46の五百城茉央さんが巨大なカブを抜こうと引っ張るとカブがしぼみ、その後ろにあった『Samsung Galaxy S25 Ultra』の看板が見えるという内容で、ピタゴラスイッチのような連鎖構造である種の“気持ちよさ”を表現しています。こうした商品と無関係の「なんか見てしまう」映像の後に広告メッセージが現れたら、よりポジティブな印象を与えられるのではと考えました。最初は半分しか見えなかった看板の全体像が最後に明かされる展開は、人は隠れているものがあると確認したくなるという仮説に基づいています。
 また9分割した画面で別々の映像を同時に流した日清食品『カップヌードル』(2021年)のCMは構造的に異常値のある映像表現が話題を集め、仕事の大きな転機となりました。こうした広告作りの原点は、山崎隆明さんが手掛けた関西弁でアフレコをするCMです。あのCMを高校時代に初めて見て、「こんなに面白いのに、ちゃんと広告として成立しているんだ」と衝撃を受け、広告業界に興味を持ちました。現在もこのような構造で驚かせる表現に対するリスペクトが強く、僕の広告作りのDNAとして深く根付いていると感じます。
中嶋優月さん、村山美羽さん共演の日本マクドナルド『サムライマックR』のウェブCMについて
 本作を作る上で意識したのは昨年公開した「夜の坂道」篇です。このCMが2024年度のWEBCM好感度で1位となった日本マクドナルドの代表作品になりうれしかったですし、僕自身がこうした情緒的で余白のある世界観が好きだとあらためて思ったんです。またサムライマックはマクドナルドの中でも高価格帯の商品ですので、明るくポップな雰囲気というよりも大人の感情に触れる上質で落ち着いたトーンを目指しました。
 本作では櫻坂46の中嶋優月さんと村山美羽さんが公園のブランコやすべり台などで無邪気に遊ぶ様子や、ベンチに並んでサムライマックをほおばる姿を描いています。企画の出発点は「大人になると、遊びの誘いが飲みか食事の二択になってしまう」「ブランコに乗って話したい」といった声をSNSで見かけたことで、「大人でも『公園で遊ぼ』って、誘えたら。」をコンセプトに展開しました。繊細な心情表現が得意な松岡芳佳監督の演出によって、おふたりが心から楽しんでいる様子を表現できたように思います。上野皓平さんがカバーしたエモーショナルな楽曲『青いベンチ』(サスケ/2004年リリース)も相まって、大人世代の方々が公園で遊んでいた頃の自分に戻ったような感覚になっていただけたらうれしいです。

広告を“見るべきコンテンツ”に昇華

『I feel Coke』の楽曲が印象的な『ビッグマックR』と『コカ・コーラ』のコラボCMについて
 このコラボCMは日本マクドナルドのCMO・ズナイデン房子さんの熱い思いから誕生したものです。マクドナルドの広告を担当する中で感じるのは、ズナイデンさんが一番の企画者だということ。数字やデータにとらわれず「楽しそうだからやろうよ」という熱量があらゆる制作現場の原動力になっている気がします。
 僕自身は澤本嘉光CDや大石タケシさんのもとでプランナーとして昨年から本作に携わっています。前作からさらに進化するためにアニメの要素を加えるという案は大石さんのアイデアで、ズナイデンさんや澤本さんにとって思い入れの深い作品でもある『めぞん一刻』、『きまぐれオレンジ☆ロード』『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』という1980年代を象徴する人気アニメとのコラボが実現しました。
 撮影は屋外ロケを中心に行い、望遠レンズを使用したりフィルム調の質感に仕上げたりと、昭和のCMのような見え方を再現しています。櫻坂46の守屋麗奈さんをはじめ、人々の弾ける笑顔が次々に映る展開はビッグマックとコカ・コーラという説明不要のブランドならではですよね。細かな動きまで実写とアニメをリンクさせるなどディテールにもこだわり、懐かしさと新しさが共存する映像に仕上がりました。
平野紫耀さんと少年の夏のひとコマを描く池田模範堂『ムヒ』のCMの狙いとは
 本作は「日本の夏といえばムヒ」という印象が定着することを目指して制作しています。最近のSNSを見ていると、何げない音楽と風景だけの動画に数万いいねが付くなど、人は必ずしも映像にインパクトや複雑な展開を求めていないように感じます。ですので本作も、日本の夏の原風景と平野紫耀さんと美しい音楽に要素を絞りました。情報量の多いCMが流れる中では、このようなCMの方が深く心に残り、多くの方に好きになってもらえるのではと考えました。
 また、本作に限らず広告を作る際は出演する方のファンの存在を意識し、日頃どのような投稿をしているかなどをチェックするようにしています。「一緒に行く?」と少年を冒険に誘うようなセリフで展開する本作は世界を舞台に活躍する平野さん自身の活動に重なる部分もあり、ファンの皆さまからも好評だったように感じます。CMに加え、平野さんと少年役の森優理斗さんの自然体なやり取りを映す縦型動画やメイキング映像への反響も大きく、非常にありがたく思っています。
視聴者の心に残る広告作りをするために大切にされていることとは
 電通に入社した当初はクリエイティブ職ではなく、趣味で始めたドローンカメラマンの経験が転機になりました。Instagramなどに写真を投稿するうちにSNS発信のノウハウが身につき、そこから少しずつSNS関連の仕事で声を掛けていただけるようになりました。
 広告制作で大切にしているのは「なんかしらの異常値があること」「人は心が動く前に驚いている」「面白いとは似ていないこと」といった古川裕也さんや高崎卓馬さん、井村光明さんの言葉で、前例のない構造や似ていない表現の方が自分も視聴者も楽しめる気がします。
 もうひとつ大事にしているのは「コンテンツとして戦う」ということ。SNSでは広告が他のコンテンツと並列に扱われ、特に若い世代は広告と認識した瞬間にスルーする傾向があります。ですので膨大な数のいいねがついている、リポストされているといった話題化を通して、広告が“見るべきコンテンツ”に昇華することを意識しています。拡がりを生むために、SNSで気になる投稿や音楽、アーティストなどの情報収集を続けています。あらゆるコンテンツの要素を分解して、要素の掛け算や足し算を繰り返すことで「この文脈とこの楽曲なら〇万いいねがつく」といったレスポンスを数字で予測できるようになりました。
これからの広告業界の可能性について
 近年はデータ主義やデジタル化の影響で、似た構造や表現の広告が増えています。一方でTikTokなどのショート動画では感覚的な心地よさや右脳的な楽しさが評価される傾向が強いと思います。メディアを問わず、データだけでは測れない“気持ちよさ”が現代の広告に求められているのではないでしょうか。広告業界は予算やキャスティングの面で、他のエンタメ業界にはない圧倒的な強みがあります。感覚的なクリエイティブと融合すれば、まだまだ可能性は広がるはず。ただ広告は相対的なものなのでひとつの正解に固執せず、時代の空気を読みながらこれまでにない表現を追求することが人の心を動かす鍵だと考えています。
Indeed/タウンワーク
「タウンワークのうた・ハミング」篇 2025年5月7日オンエア開始
黄色を基調とした空間で、背景と同色のパーカーを着た今田美桜が『聖者の行進』の替え歌で「♪バイトするなら タウンワーク」と口ずさむCMなどを放送。2025年6月度に商品別CM好感度で総合2位となった
【主な制作スタッフ】
広告会社:電通 制作会社:ギークピクチュアズ 
CD:花田礼 企画:小池茅 AD:杦本翔吾 
CP:岩佐遼太郎/宮内七海 
プロデューサー:井上架音/若生秀人 
演出:川北亮平 撮影:オグラトモアキ 
音楽制作会社:メロディー・パンチ 音楽:河副洋之
日本マクドナルド/ビッグマック
「明日も 笑おう あの頃も今も」篇 2025年7月1日オンエア開始
コカ・コーラ社の伝説的なCMである『I feel Coke』とコラボした第2弾CM。『めぞん一刻』といった1980年代のアニメの名シーンや、櫻坂46の守屋麗奈らさまざまな人々が『ビッグマックR』を笑顔で楽しむ姿を映した
【主な制作スタッフ】
広告会社:電通/ビーコンコミュニケーションズ 制作会社:ギークピクチュアズ 
CD:澤本嘉光 企画・コピー:澤本嘉光/大石タケシ/花田礼
プロデューサー:稲垣護/富木俊介 PM:加藤有紗 
演出:大野大樹 助監督:白川竜治 撮影:近藤哲也 照明:溝口知 美術:秋葉悦子 
フードスタイリスト:左近允英子 
池田模範堂/ムヒ
「僕らの夏は・ひまわり畑」篇 2025年5月9日オンエア開始
ひまわり畑で平野紫耀が首に商品を塗って立ち上がると、1年ぶりに再会した少年(森優理斗)から「また行っちゃうの?」と尋ねられる。続けて平野が「一緒に行く?」と笑顔で返し、ふたりで駆けだす様子を描いた
【主な制作スタッフ】
広告会社:電通 制作会社:ギークピクチュアズ
CD:山上陽介 企画:花田礼 コピー:小池茅 AD:杦本翔吾
CP:相澤京子/森戸麻那美 プロデューサー:井上架音/若生秀人
演出:ジョンウンヒ 撮影:村上ヨシタカ 音楽制作会社:Ongakushitsu 音楽:原田瞳
その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。