クリエイティブディレクター 見市沖のこれからのCMの話をしよう【三島 邦彦氏】
コピーを軸に嘘のない思いを伝える
クリエイティブディレクター・見市沖氏が広告制作の最前線で活躍するクリエイターと、これからのCMのあり方を探る連載企画の第9回。今回の対談相手はNetflix「人間まるだし。」「再⽣のはじまり」、ホンダ「難問を愛そう。」「きょう、だれかを、うれしくできた?」など数々の話題作を手掛けるコピーライターの三島邦彦氏。前編では仕事の転機や代表的なクリエイティブワークの制作意図、言葉を軸とした広告作りなどについて語っていただいた。
(取材:2025年7月23日)
(取材:2025年7月23日)
【 CM INDEX 2025年9月号に掲載された記事をご紹介します。所属役職は当時のものです。】

三島 邦彦氏
コピーライター
長崎県長崎市生まれ。2025年、電通から独立してフリーランスに。近年の主な仕事にNetflix「人間まるだし。」「再生のはじまり」「いいものつくろう。」「プロだから。」、Honda「難問を愛そう。」「きょう、だれかを、うれしくできた?」、Honda F1ラストラン「じゃ、最後、行ってきます。」など。著書に『⾔葉からの⾃由 コピーライターの思考と視点』(宣伝会議)。ACC総務⼤⾂賞/グランプリ、小田桐昭賞など国内外で多数受賞
コピーライター
長崎県長崎市生まれ。2025年、電通から独立してフリーランスに。近年の主な仕事にNetflix「人間まるだし。」「再生のはじまり」「いいものつくろう。」「プロだから。」、Honda「難問を愛そう。」「きょう、だれかを、うれしくできた?」、Honda F1ラストラン「じゃ、最後、行ってきます。」など。著書に『⾔葉からの⾃由 コピーライターの思考と視点』(宣伝会議)。ACC総務⼤⾂賞/グランプリ、小田桐昭賞など国内外で多数受賞

見市沖氏
株式会社 本音
クリエーティブ・ディレクター/コピーライター/CMプランナー
電通を経て2025年、クリエイティブブティック・本音を設立。主な仕事にサントリー「ジハンピ」、AGC「実験するぞ!」、出前館「でで出前館」、TimeTree「タイムツリーはじめました」、ポッキー「シェアハピ」。国内外で受賞多数
株式会社 本音
クリエーティブ・ディレクター/コピーライター/CMプランナー
電通を経て2025年、クリエイティブブティック・本音を設立。主な仕事にサントリー「ジハンピ」、AGC「実験するぞ!」、出前館「でで出前館」、TimeTree「タイムツリーはじめました」、ポッキー「シェアハピ」。国内外で受賞多数
公募賞への挑戦が広告と純粋に向き合う機会に
見市:私も三島さんも今年の春、同じタイミングで電通から独立したんですよね。
三島:会社は立ち上げていないのですが、4月からフリーランスのコピーライターとして活動しています。
見市:広告業界を目指したきっかけからうかがえますか。
三島:大学時代にメディア関連の授業の一環で、電通の澤本嘉光さんの講義を受け、CMを作るって面白そうだなと興味を持ちました。というのも事務作業が苦手で、四コマ漫画のような絵コンテを描くことが仕事になるなら飽きずに続けられそうだと(笑)。不真面目な動機ではありましたが、岡康道さんや佐藤雅彦さんの作品集などを見ていくうちにCMの面白さに目覚め、CMを作りたいと本気で思うようになりました。
見市:電通では最初からクリエイティブ配属でしたか。
三島:そうです。ただ兄弟子だった安達和英さんの描くコンテが完璧すぎて、入社1年目で打ちのめされました。まず自分の絵コンテではうまく伝わらないと分かって字コンテを書くようになったんです。コピーやステートメントを褒められる機会が多かったこともあり、自分はCMの企画よりも言葉を考える方が向いていると気付きました。
見市:早い段階でご自身の適性を見極めて、CMプランナーからコピーライターにシフトされたのですね。
三島:入社当時は働く時間に制限がなかったこともあり、体力の限界まで仕事をしていました。商品カタログのような地道な仕事も含め、とにかく何でもやってみようという気持ちでしたね。コピー年鑑の写経もしていたのですが、素敵だなと思うコピーを書いている人は30代以降が多かったので、20代は修行期間だと割り切っていました。
見市:コピーライターとして、言葉をメインに広告を作っていくスタイルはその頃からですか。
三島:入社してしばらくはストーリーを中心に企画していましたが、コピーライターの道を極めるなら、締めのコピーやナレーションをきちんと書くべきだと考えるようになりました。また入社当時は「これからはデジタルの時代だ」と社内外でいわれていましたが、そうした領域にはあまり心が引かれず、ずっとコピーを思い続けてきた気がします。
見市:ご自身にとって転換点となった仕事はありましたか。
三島:仕事というよりは公募賞での経験が大きいです。印象深いのはピンクリボンデザイン大賞で、「乳がん検診で一番多く見つかるものは、安心です。」※1というコピーを評価していただきました。過去の受賞作にはない言葉で、「女性ではない自分が言っても嘘にならないことってなんだろう」と考えながら書いたものです。朝日広告賞ではミノムシをモチーフとしたビジュアルの静寂さを生かすべく、あえてコピーを入れずに完成させた作品で受賞しました。コピーを書き加えるよりも、あえて沈黙することで広告としてのクオリティーを高める方が大切だと考えました。若手の頃にこうした公募賞に挑戦したことで、広告と純粋に向き合う貴重な機会を得られたと感じています。
三島:会社は立ち上げていないのですが、4月からフリーランスのコピーライターとして活動しています。
見市:広告業界を目指したきっかけからうかがえますか。
三島:大学時代にメディア関連の授業の一環で、電通の澤本嘉光さんの講義を受け、CMを作るって面白そうだなと興味を持ちました。というのも事務作業が苦手で、四コマ漫画のような絵コンテを描くことが仕事になるなら飽きずに続けられそうだと(笑)。不真面目な動機ではありましたが、岡康道さんや佐藤雅彦さんの作品集などを見ていくうちにCMの面白さに目覚め、CMを作りたいと本気で思うようになりました。
見市:電通では最初からクリエイティブ配属でしたか。
三島:そうです。ただ兄弟子だった安達和英さんの描くコンテが完璧すぎて、入社1年目で打ちのめされました。まず自分の絵コンテではうまく伝わらないと分かって字コンテを書くようになったんです。コピーやステートメントを褒められる機会が多かったこともあり、自分はCMの企画よりも言葉を考える方が向いていると気付きました。
見市:早い段階でご自身の適性を見極めて、CMプランナーからコピーライターにシフトされたのですね。
三島:入社当時は働く時間に制限がなかったこともあり、体力の限界まで仕事をしていました。商品カタログのような地道な仕事も含め、とにかく何でもやってみようという気持ちでしたね。コピー年鑑の写経もしていたのですが、素敵だなと思うコピーを書いている人は30代以降が多かったので、20代は修行期間だと割り切っていました。
見市:コピーライターとして、言葉をメインに広告を作っていくスタイルはその頃からですか。
三島:入社してしばらくはストーリーを中心に企画していましたが、コピーライターの道を極めるなら、締めのコピーやナレーションをきちんと書くべきだと考えるようになりました。また入社当時は「これからはデジタルの時代だ」と社内外でいわれていましたが、そうした領域にはあまり心が引かれず、ずっとコピーを思い続けてきた気がします。
見市:ご自身にとって転換点となった仕事はありましたか。
三島:仕事というよりは公募賞での経験が大きいです。印象深いのはピンクリボンデザイン大賞で、「乳がん検診で一番多く見つかるものは、安心です。」※1というコピーを評価していただきました。過去の受賞作にはない言葉で、「女性ではない自分が言っても嘘にならないことってなんだろう」と考えながら書いたものです。朝日広告賞ではミノムシをモチーフとしたビジュアルの静寂さを生かすべく、あえてコピーを入れずに完成させた作品で受賞しました。コピーを書き加えるよりも、あえて沈黙することで広告としてのクオリティーを高める方が大切だと考えました。若手の頃にこうした公募賞に挑戦したことで、広告と純粋に向き合う貴重な機会を得られたと感じています。
※1. 三島氏のコピー「乳がん検診で一番多く見つかるものは、安心です。」がピンクリボンデザイン大賞(2010年)で最優秀賞に。同年度の朝日広告賞・第1部ではミノムシの巣に窓を付けたグラフィック広告で最高賞を受賞。
自分が言っても嘘にならない言葉を大切に
見市:ピンクリボンのコピーは、乳がん検診に対する三島さんならではの視点の発見ということですね。広告を作る上で、自分の感覚に嘘をつかないことは重要ですか。
三島:広告を見る側としても「本当にそうだ」と感じるものが好きなので、うまく言えなくてもいいから広告制作者が心から思っていないと、視聴者にメッセージが伝わらない気がします。少なくとも打ち合わせの場では本音を出し合おうとするところが、この仕事の魅力でもあると思います。
三島:広告を見る側としても「本当にそうだ」と感じるものが好きなので、うまく言えなくてもいいから広告制作者が心から思っていないと、視聴者にメッセージが伝わらない気がします。少なくとも打ち合わせの場では本音を出し合おうとするところが、この仕事の魅力でもあると思います。
打ち合わせでのなにげないひと言からいいコピーが生まれることも
見市:打ち合わせでポロッと出たひと言が担当者の本音だったり、ものすごくいいコピーだったりしますよね。
三島:「実際、これどうなんでしょう」「本当のところ、どう思いますか」みたいな会話ができるのは、精神的にも恵まれた環境だと思います。こういう楽しさがそのまま広告として世に出たら最高だと思います。
見市:公募賞以外で、コピーライターとして転機となった仕事はどのようなものでしたか。
三島:Netflixの「人間まるだし。」※2です。入社から10年以上経って、初めてコピーライターになった気がしました。
見市:このコピーはどのように発想されたのでしょうか。
三島:まず「人間まるだし。」という言葉がポンと出てきて、これいいなと思ったんです。そこからステートメントを書いて、CMとしての見せ方を考えるといった順序でした。
見市:三島さんは「プロだから。」という『極悪女王』のコピーも書かれていますよね。Netflixの広告は映像作品をキャッチーに表現するだけでなく、受け手の人生にリンクするような印象を受けます。
三島:おっしゃる通り、配信コンテンツの広告であると同時に、Netflixそのものの広告だと考えています。一般的な映画やドラマと違ってNetflixの場合はサービスへの加入をポジティブに感じていただく必要があります。ですので作品の内容を伝えるだけでなく、『極悪女王』であればドラマのテーマである女子プロに関心がない人も含めて興味を持ってもらえるよう、より大きな“人間の話”として語る回路を作ることを意識しています。
見市:「人間まるだし。」も『全裸監督』の広告でありながら、Netflixの広告になっていますね。
三島:当時はNetflixがまだこれからという時期だったので、Netflixの姿勢を示す役割も担っていました。「この作品以外にも面白いものがありそうだ」と思われなければ、ほかのプラットフォームと同じ顔つきになってしまうので。Netflixに関しては、作品広告がブランド広告としても成立するという理想的な形を実現できたと思っています。
三島:「実際、これどうなんでしょう」「本当のところ、どう思いますか」みたいな会話ができるのは、精神的にも恵まれた環境だと思います。こういう楽しさがそのまま広告として世に出たら最高だと思います。
見市:公募賞以外で、コピーライターとして転機となった仕事はどのようなものでしたか。
三島:Netflixの「人間まるだし。」※2です。入社から10年以上経って、初めてコピーライターになった気がしました。
見市:このコピーはどのように発想されたのでしょうか。
三島:まず「人間まるだし。」という言葉がポンと出てきて、これいいなと思ったんです。そこからステートメントを書いて、CMとしての見せ方を考えるといった順序でした。
見市:三島さんは「プロだから。」という『極悪女王』のコピーも書かれていますよね。Netflixの広告は映像作品をキャッチーに表現するだけでなく、受け手の人生にリンクするような印象を受けます。
三島:おっしゃる通り、配信コンテンツの広告であると同時に、Netflixそのものの広告だと考えています。一般的な映画やドラマと違ってNetflixの場合はサービスへの加入をポジティブに感じていただく必要があります。ですので作品の内容を伝えるだけでなく、『極悪女王』であればドラマのテーマである女子プロに関心がない人も含めて興味を持ってもらえるよう、より大きな“人間の話”として語る回路を作ることを意識しています。
見市:「人間まるだし。」も『全裸監督』の広告でありながら、Netflixの広告になっていますね。
三島:当時はNetflixがまだこれからという時期だったので、Netflixの姿勢を示す役割も担っていました。「この作品以外にも面白いものがありそうだ」と思われなければ、ほかのプラットフォームと同じ顔つきになってしまうので。Netflixに関しては、作品広告がブランド広告としても成立するという理想的な形を実現できたと思っています。
※2. Netflixのドラマ『全裸監督』の広告として「人間まるだし。」をコピーとしたCMや、渋谷スクランブル交差点でのOOHなどを展開(2019年)。翌年のACCフィルム部門 Aカテゴリーで総務大臣賞/ACCグランプリに輝いた。
ホンダ「きょう、だれかを、うれしくできた?」アウターとインナーに向けたメッセージ
見市:ホンダの企業広告についてもうかがえますか。
三島:発電機からF1、宇宙関連に至るまで多岐にわたる事業活動を企業広告として発信したいというミッションのもと、King & Princeを起用して「きょう、だれかを、うれしくできた?」※3をコピーとしたコミュニケーションプロジェクト『Hondaハート』を展開しました。すべての事業を貫く言葉を考えるに当たっては、まずホンダの皆さんがどんな状況でも言えることはないかと探っていきました。
見市:いい意味で自動車会社らしくないコピーですが、まさに“きょう、だれかを、うれしく”することの積み重ねがホンダの企業活動そのものだと思いますし、広告を見る人の心の支えにもなるフレーズだと感じました。多様な事業内容を伝えるというテーマに対して、どのようにこの表現にたどり着いたのですか。
三島:まず小さいところから考えました。芝刈機や除雪機のような製品にも光を当てたいと思ったんです。F1や宇宙といったスケールの大きな事業に比べて、こうした人々の暮らしに近い製品が注目されてこなかったとしたら、そこに光を当てる視点とはなんだろう。そう考えたときに「きょう」と「だれかを、うれしくする」という言葉が出てきました。ホンダのあらゆる製品は「“きょう、だれかを、うれしく”しているものなんだ」と社員の皆さんが感じられるようにという思いも込めたコピーで、アウター向けとインナー向け、半々くらいの気持ちで書きました。これは先ほどの“本当に思っていること”に近い話で、大きな企業の全体像を捉えようとしたときに、自分でも実感を持って理解できる本当のことがあるとしたらなんだろうと考えたんです。ホンダの事業に対して、僕でも分かるくらい本当のことを探っていくうちに「毎日だれかをうれしくしようとしている」のは確かだなと思いました。
三島:発電機からF1、宇宙関連に至るまで多岐にわたる事業活動を企業広告として発信したいというミッションのもと、King & Princeを起用して「きょう、だれかを、うれしくできた?」※3をコピーとしたコミュニケーションプロジェクト『Hondaハート』を展開しました。すべての事業を貫く言葉を考えるに当たっては、まずホンダの皆さんがどんな状況でも言えることはないかと探っていきました。
見市:いい意味で自動車会社らしくないコピーですが、まさに“きょう、だれかを、うれしく”することの積み重ねがホンダの企業活動そのものだと思いますし、広告を見る人の心の支えにもなるフレーズだと感じました。多様な事業内容を伝えるというテーマに対して、どのようにこの表現にたどり着いたのですか。
三島:まず小さいところから考えました。芝刈機や除雪機のような製品にも光を当てたいと思ったんです。F1や宇宙といったスケールの大きな事業に比べて、こうした人々の暮らしに近い製品が注目されてこなかったとしたら、そこに光を当てる視点とはなんだろう。そう考えたときに「きょう」と「だれかを、うれしくする」という言葉が出てきました。ホンダのあらゆる製品は「“きょう、だれかを、うれしく”しているものなんだ」と社員の皆さんが感じられるようにという思いも込めたコピーで、アウター向けとインナー向け、半々くらいの気持ちで書きました。これは先ほどの“本当に思っていること”に近い話で、大きな企業の全体像を捉えようとしたときに、自分でも実感を持って理解できる本当のことがあるとしたらなんだろうと考えたんです。ホンダの事業に対して、僕でも分かるくらい本当のことを探っていくうちに「毎日だれかをうれしくしようとしている」のは確かだなと思いました。
※3. ホンダのコミュニケーションプロジェクト『Hondaハート』(2021年開始)は「きょう、だれかを、うれしくできた?」をメッセージに展開。「難問を愛そう。」をコピーに、カーボンニュートラルへの取り組みを伝えるCMなどが注目された。
広告を好きになってもらうのはその態度に賛成してもらうこと
見市:ホンダの広告では「難問を愛そう。」も印象的です。
三島:「難問を愛そう。」はカーボンニュートラルをテーマにした広告のコピーです。このテーマに対して自分自身が実感として語れることを探す中で、ひとりの社員の方から「カーボンニュートラルは本当に難しいことなんです。でもやるんです、そういう会社なので」といったお話をうかがいました。それを聞いて「難しいことをやるのは嫌いじゃない」というホンダの皆さんの姿勢が本当に素敵だなと思い、このコピーを提案させていただきました。
見市:広告でカーボンニュートラルの説明をするのではなく「難問を愛そう。」というホンダとしての態度表明をして、同じ思いで肩を組める仲間を増やしていく。広告を好きになってもらうって、その態度に賛成してもらうことかもしれません。そういう共鳴する気持ちの入り口を作るには、まずご自身の実感が大事だということですね。三島さんは、CMの中でのコピーの役割や位置付けをどのように考えていらっしゃいますか。
三島:私はコピーライターとしてCMを作るスタンスですので、まず“言葉ありき”です。コピーがあって、それがどう記憶に残るか。映像や音楽については、コピーへの感情や気分を最大限に引き出すことを意識しています。例えばNetflixの場合は、まず私がコピーやナレーションなどの言葉の構造を考え、それに対してどういう映像がベストかをアートディレクターや監督と相談しながら作っていきました。グラフィック広告をコピーライターとアートディレクターが組んで作るやり方に近いと思います。
見市:日本では、企画の構造から考えるプランナー出身のクリエイティブディレクターが多いので、言葉を軸に作っていくスタイルは珍しいですね。
三島:「難問を愛そう。」はカーボンニュートラルをテーマにした広告のコピーです。このテーマに対して自分自身が実感として語れることを探す中で、ひとりの社員の方から「カーボンニュートラルは本当に難しいことなんです。でもやるんです、そういう会社なので」といったお話をうかがいました。それを聞いて「難しいことをやるのは嫌いじゃない」というホンダの皆さんの姿勢が本当に素敵だなと思い、このコピーを提案させていただきました。
見市:広告でカーボンニュートラルの説明をするのではなく「難問を愛そう。」というホンダとしての態度表明をして、同じ思いで肩を組める仲間を増やしていく。広告を好きになってもらうって、その態度に賛成してもらうことかもしれません。そういう共鳴する気持ちの入り口を作るには、まずご自身の実感が大事だということですね。三島さんは、CMの中でのコピーの役割や位置付けをどのように考えていらっしゃいますか。
三島:私はコピーライターとしてCMを作るスタンスですので、まず“言葉ありき”です。コピーがあって、それがどう記憶に残るか。映像や音楽については、コピーへの感情や気分を最大限に引き出すことを意識しています。例えばNetflixの場合は、まず私がコピーやナレーションなどの言葉の構造を考え、それに対してどういう映像がベストかをアートディレクターや監督と相談しながら作っていきました。グラフィック広告をコピーライターとアートディレクターが組んで作るやり方に近いと思います。
見市:日本では、企画の構造から考えるプランナー出身のクリエイティブディレクターが多いので、言葉を軸に作っていくスタイルは珍しいですね。
文:是澤励
CM制作は“まず言葉ありき”コピーを軸にベストな演出を追究
三島:「とにかくコピーを残したい」という乱暴なスタンスなので、異質なのかもしれません。CMであれば、コピーだけが15秒間映されても成立することを目指しています。
見市:三島さんは言葉でどう戦うかにフォーカスしているので、ほかのCMとの差異が生まれるのだと思います。コピーを書く際、グラフィック広告とCMで違いはありますか。
三島:変わらないですね。CMはコピーを置く場所のひとつといいますか、常にどんな媒体でも使える言葉を書こうと意識しています。OOHなどのグラフィック広告のステートメントを制作する際は、そのまま読み上げればCMのナレーションになるよう心掛けています。
見市:三島さんは言葉でどう戦うかにフォーカスしているので、ほかのCMとの差異が生まれるのだと思います。コピーを書く際、グラフィック広告とCMで違いはありますか。
三島:変わらないですね。CMはコピーを置く場所のひとつといいますか、常にどんな媒体でも使える言葉を書こうと意識しています。OOHなどのグラフィック広告のステートメントを制作する際は、そのまま読み上げればCMのナレーションになるよう心掛けています。
後編は10月号に掲載
その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。


