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広告の今を語る デジタル広告のリスクとJICDAQの使命  一般社団法人 デジタル広告品質認証機構(JICDAQ)


不正な手法によって広告費の水増しを図る「アドフラウド(広告詐欺)」、ブランドイメージに不適合なサイトに広告を掲載されることによる「ブランド毀損」が大きな問題となっているデジタル広告業界。このような状況を健全化するため、2021年に設立された一般社団法人 デジタル広告品質認証機構(JICDAQ)の小出誠事務局長にお話をうかがった。
(取材:2025年8月15日/写真:長谷川大)
【 CM INDEX 2025年9月号に掲載された記事をご紹介します。】

インタビュイー
小出 誠氏
一般社団法人 デジタル広告品質認証機構
事務局長

JICDAQの使命はデジタル広告業界を健全化すること

— JICDAQの成り立ちと役割について
 2021年に設立された組織で、通称「JICDAQ(ジックダック)」です。正式な組織名は「一般社団法人 デジタル広告品質認証機構」となります。日本のデジタル広告分野において、広告の掲載品質に関わる業務プロセスの認証基準を設定し、それに沿った事業を行っている事業者(広告会社、メディア事業者、広告仲介業者など)の業務品質を確認し、事業者名を公開することで、デジタル広告の掲載品質向上に取り組んでいる事業者を明確にする認証機構です。例えば、安全設備や食品などに品質を保証する認証マークがついていることがあると思いますが、そのデジタル広告版だとお考えいただくと分かりやすいかもしれません。
 なぜこのような組織ができたかというと、デジタル広告分野の成長に伴って急激に増えてきた課題を解決する必要があるという日本のデジタル広告関係者の危機感からです。JAA(日本アドバタイザーズ協会)、JAAA(日本広告業協会)、JIAA(日本インタラクティブ広告協会)の3団体によって、米国や英国の同様の組織を参考に設立されました。認証に当たっての検証業務は日本ABC協会が行っています。ABC協会は1914年に公正で透明性のある広告取引を行うことを目的にアメリカで誕生した機構で、1950年代に立ち上げられた日本ABC協会は、今日まで新聞・雑誌などの販売・配布部数を公査、認証するなど、公正で透明性のある広告取引のために活動しています。

アドフラウドとブランドセーフティ広告主は被害者であり加害者にも

— 現在のデジタル広告業界が抱える問題とは
 現在のデジタル広告を取り巻く環境としては、 不正なプログラム(Bot)によって広告の閲覧数・クリック数を水増しして広告費用をかすめとろうとする「アドフラウド(広告詐欺)」が社会問題として非常に注目されています。また、ふさわしくない媒体へ広告出稿されてしまうことによるイメージ毀損という「ブランドセーフティ」の問題もあります。後者に関しては、広告出稿元として間接的に違法サイトや偽情報サイトに資金を与えているという意味で、加害者側とみなされてしまう恐れもあります。日本の広告市場において、インターネット広告(デジタル広告)費が2024年に3兆6517億円とその他のマス4媒体(新聞・雑誌・ラジオ・テレビメディア)合計に比べて約1.5倍という圧倒的なシェアを持つようになった現在、日本のアドフラウドとブランドセーフティの状況は、世界各国に比べて最悪レベルという調査もあります。
 デジタル広告ではアドネットワークなどを利用すると、事前にどのようなサイトに掲載されるかを把握することは非常に難しくなります。特にこれを出稿元企業単体で管理しようとすると、次々と現れる悪質なサイトとのイタチごっこになるため、費用やマンパワーを要します。そこで、このような問題に対策をしている企業を第三者が認定して、「この認証企業を使えば、何も対応していない企業よりも安心・安全です」という提示をする仕組みがJICDAQというわけです。
— なぜこのような問題が日本で多く起きるのでしょうか
 広告主のデジタル広告への知識が薄いことが理由のひとつです。どこにどのように掲載されるか事前に把握できる既存のマスメディア広告の延長線上に、細かなターゲティングやクリック課金のような合理的な機能が単純に加わったものがデジタル広告だと考えてしまっている広告主の方々が多いと感じます。特に経営陣の中で、問題の深刻さを理解されている方が少ないというのが実感としてあります。皆さまもスマホやPCで情報を手に入れようと検索をした際に広告だらけのサイトに入ってしまった経験があるのではないでしょうか。出稿費用の安さとクリック率のみを追い求めてアドネットワークを利用していると、そのようなサイトの中に自社の広告が組み入れられていて、「クリックはされているがブランド価値が損なわれている」という状況に陥る可能性があります。気付けばアダルトサイト中心の出稿になってしまい、そのことが原因でブランド価値が下がり、実店舗での売り上げが下がる、小売店に商品を置いてもらえなくなるというリスクもありえます。
 現場の方々のなかには「今までの自分たちの施策や前任者の仕事を否定することにつながるため、この問題に対応するのは…」とためらわれる方もいらっしゃるかもしれません。とはいえ組織としてこの問題をしっかりと理解した上で、「過去を叱責するのではなく、未来のために改善していく」という旗を積極的に振っていただければ、潜在的なリスクの回避につながると思います。
— JICDAQ認証を受けるフローについて
 「偽広告を作った広告主側を規制する団体ですか?」といった質問をいただくことがあるのですが、JICDAQ認証を受けるのは広告を作る側ではありません。JICDAQ認証の対象は「広告購入者」である広告会社や、「広告取引仲介事業者」であるDSP・アドネットワーク事業者、「広告販売者」である媒体事業者、そして「広告配信・計測事業者」で、広告を作った側ではなく掲出する側の事業者です。(前頁「JICDAQ認証の対象となる事業領域」参照)。これらの事業者が、JICDAQに登録を行うと3~4カ月ほどかけて検証が行われ、基準に達しているとなれば晴れて認証となります(2025年9月1日時点で205社が登録、183社が認証済み)。
 今年6月9日に総務省から「デジタル広告の適正かつ効果的な配信に向けた広告主等向けガイダンス」が公表されました。総務省としても、違法ダウンロードサイトや偽情報サイトが人を集め、そこに広告が集まって資金源となることを強く問題視しています。本ガイダンスをもとに、JICDAQを含む広告団体合同でセミナーを同月16日にハイブリッド開催し、266社729人の方々にご参加いただきました。

②自己宣言は新規申込受付停止中。2026年末で完全廃止。

より多くの広告主の意識を高め未来のためにひとつずつ改善を

 広告配信・媒体側はもちろんですが、この問題に広告主側も自覚的になって、悪質なサイトに出稿する事業者を避けるようになれば、業界全体の健全化につながります。やはりこの問題にどう向き合うか、広告主の経営陣の姿勢がとても大切です。違法サイトに自社ブランドの広告が出稿されていることが問題となった場合、経営陣がどのような対策を取っていたかを社会に説明する必要が出てきます。広告主の皆さまにはリスク管理の点でも、また健全なデジタル広告社会の実現という点でも、ぜひJICDAQの認証事業者をご利用いただきたいと考えています。このほか広告主を対象としてJICDAQの趣旨に賛同していることを示す「JICDAQ登録アドバタイザー」という仕組みがあります。こちらは無料の登録のみでJICDAQのサイトに社名が公開され、セミナーの受講などができるほか、自社の広告活動の信頼性を高めることにつながりますので、ぜひご活用いただきたいです。
 そして広告会社の皆さまはこの問題に向き合う姿勢を表明するためにも、1社でも多くJICDAQ認証の取得を検討いただけたらと思います。
その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。