広告主インタビュー 日清紡ホールディングス株式会社【2024年度 CM好感度 獲得効率No.1】
話題性の高いCMで知名度向上に貢献
フルCGの動物が歌うCMシリーズを展開する日清紡ホールディングスが3年連続のCM好感度 獲得効率トップとなった。同社がCMを放送する狙いや表現の工夫などについて、岡崎大無氏に語っていただいた。
(取材:2025年5月16日)
(取材:2025年5月16日)
【 CM INDEX 2025年6月号に掲載された記事をご紹介します。】
秘書室長
経営戦略室 IR・コーポレートコミュニケーション
グループ長
岡崎 大無 氏
京都大学卒業後、1995年に日清紡績株式会社(現 日清紡ホールディングス株式
会社)入社。人事、法務、秘書を経て、2025年4月よりIR・コーポレートコミュニ
ケーショングループ長。趣味は家族旅行、スポーツ観戦。
経営戦略室 IR・コーポレートコミュニケーション
グループ長
岡崎 大無 氏
京都大学卒業後、1995年に日清紡績株式会社(現 日清紡ホールディングス株式
会社)入社。人事、法務、秘書を経て、2025年4月よりIR・コーポレートコミュニ
ケーショングループ長。趣味は家族旅行、スポーツ観戦。
“ちょっと面白い会社”とCMが名刺代わりに
クリエイターの愛情と情熱に感謝
— 3年連続のCM好感度 獲得効率No.1に輝きました。ご感想をお聞かせください
現在の「歌おう!ニッシンボー」シリーズの開始が2022年4月で、それ以降3年連続で受賞させていただいたということで非常に感慨深いです。「ドッグシアター」シリーズ(2012年オンエア開始)を含め、動物とCMソングを軸に「ちょっと面白いCMを作っている会社」という印象が定着していると感じております。日頃、CMが名刺代わりとなっているといいますか、ごあいさつや商談の際には少なからずCMの話題が自然と起こるんです。次回はどんな動物が出てくるのかと期待してくださっているという声も多くいただいています。
私は今年の4月から広告部門に着任いたしましたので、これまで制作に直接関わってきたわけではないのですが、この3年連続の受賞というのは長年CM制作に携わってくださっている中治信博さん(ワトソン・クリック)や古川雅之さん(電通)をはじめとしたクリエイティブチームの皆さまが本当に私どもの思いを理解し、愛情と情熱を傾けてくださったことの表れだと感じるとともに心より感謝しております。
私は今年の4月から広告部門に着任いたしましたので、これまで制作に直接関わってきたわけではないのですが、この3年連続の受賞というのは長年CM制作に携わってくださっている中治信博さん(ワトソン・クリック)や古川雅之さん(電通)をはじめとしたクリエイティブチームの皆さまが本当に私どもの思いを理解し、愛情と情熱を傾けてくださったことの表れだと感じるとともに心より感謝しております。
厳正な“動物会議”を経て決定 動物に合わせたメッセージを追求する
— CMに毎回登場する動物が話題を集めています。起用する動物はどのように決めていらっしゃるのでしょうか
身近な動物とそうでない動物の2つのカテゴリーでバランスを取りながら選んでおり、昨年ですとネコとアザラシが登場するCMを制作しました。それぞれのカテゴリーで候補を複数のクリエイティブチームから提案いただき、広告部門のメンバーで2回にわたって行われる本気の“動物会議”を経て決定しています。何度かボツになった動物が復活してご提案いただくこともあります。候補の動物がSNSでどのように見られているかを調べて検討し、動物のキャラクターに合わせたメッセージは何かなど、大人たちが集まって動物について真剣に議論するという、ある意味異様な光景が毎年繰り広げられてきました(笑)。広告部門には若手のメンバーもおり、時代の空気を読む上で貴重な意見を出してくれますので、皆さまに喜んでいただけるようなCMを今後も全員で作り続けていけたらと思っています。
—2024年度のCM展開の工夫点について
動物はすべてCGで制作しています。実は身近な動物であればあるほどCGのクオリティが重要になるんですね。今回はネコということもあり、再現度にはかなり気を配りました。登場する数が少ないとアラも目立ちますから、7、8匹登場させようですとか、視点が一箇所に集中することを避けるため動きをつけようということで、堤防を一列で進むシチュエーションに決まりました。
「♪ニッシンボーの歌を今日も歌っています。歌うの止めたらすぐに忘れるから~」という歌は、きれいに歌い上げる「アザラシ」篇とは少し変え、最後に音を外すことでアクセントを加えました。整ったものよりも何かフックがあった方が印象に残るのではないかと工夫したところです。
「ネコ」篇は電話でロケ地に関するお問い合わせをいただくなど、これまで以上の反響がありました。SNSでも本作はインプレッションが1万7千と通常の17倍を記録し、あらためてネコの人気を実感しました。
「♪ニッシンボーの歌を今日も歌っています。歌うの止めたらすぐに忘れるから~」という歌は、きれいに歌い上げる「アザラシ」篇とは少し変え、最後に音を外すことでアクセントを加えました。整ったものよりも何かフックがあった方が印象に残るのではないかと工夫したところです。
「ネコ」篇は電話でロケ地に関するお問い合わせをいただくなど、これまで以上の反響がありました。SNSでも本作はインプレッションが1万7千と通常の17倍を記録し、あらためてネコの人気を実感しました。
CMが企業価値や社名の知名度向上に貢献
企業としてのセンスや発想を伝えるきっかけに
—10年以上、社名に特化したシンプルなメッセージを伝え続けている理由とは
さまざまなステークホルダーに対して企業価値を高めるためのコミュニケーション活動としてテレビCMが非常に有効な手段となっています。当社はBtoB企業ということもあり身近な存在とは言い難いため、まずは認知の獲得を最優先としたCMで親しみを感じていただけたらと考えています。そこから企業理解を深めていただく場としては、CMのトーン&マナーと合わせたスペシャルサイトを設け、「なんの会社か生成AIに尋ねてみました」といった遊び心のあるコンテンツも用意しながら、少しでも興味を引く事業紹介となるよう試行錯誤しているところです。また採用活動においてもCMの手応えを感じています。実際に会社説明会でも参加者の約半数がCMで当社のことを知ったと答えてくださったり、とある大学を訪れた際にも学生の方が「幼い頃に見た犬のCMをよく覚えています」と話してくださったりと、CMには一瞬のインパクトだけではなく、人々の心に長く残ることもあるのだと広告効果の偉大さを実感しました。
私どもが展開しているCMは15秒という大変短いもので、それをある種の制約と考えるのではなく、15秒をどう生かしきるかというチャレンジと捉えることもできると思っています。社名を覚えていただくためのCMとして展開していますが、「こんな切り口があったのか」 「こんな方法で世の中にメッセージを送るのか」など、企業としてのセンスや発想を多くの方に感じ取っていただけたらとてもうれしいですね。クリエイティブチームの皆さまからは15秒で情報を詰め込んでしまうとメッセージがぼやけてしまうという考えのもと、効果を最大化するための提案をいただいています。また、この広告の役割や世界観を経営層が深く理解していることも長年シリーズが続いている理由かと思います。
私どもが展開しているCMは15秒という大変短いもので、それをある種の制約と考えるのではなく、15秒をどう生かしきるかというチャレンジと捉えることもできると思っています。社名を覚えていただくためのCMとして展開していますが、「こんな切り口があったのか」 「こんな方法で世の中にメッセージを送るのか」など、企業としてのセンスや発想を多くの方に感じ取っていただけたらとてもうれしいですね。クリエイティブチームの皆さまからは15秒で情報を詰め込んでしまうとメッセージがぼやけてしまうという考えのもと、効果を最大化するための提案をいただいています。また、この広告の役割や世界観を経営層が深く理解していることも長年シリーズが続いている理由かと思います。
飽きられないように表現の方向性を試行錯誤
時代の空気を常に見極める
—今後の広告展開についてお聞かせください
カピバラが登場する新CMを今年4月に開始しました。本作には「♪ニッシンボーをなんとなく歌ったら ニッシンボー なんだかちょっとうれしい」という新しいCMソングを採用しました。前年はメッセージが比較的明確だったので、今回は少し柔らかい方向性にしています。メッセージが強すぎると飽きも早いのではないかと。音楽も同じものを使うべきか、変えた方がいいのか、常に試行錯誤ではありますが、その動物らしさや時代の空気を見極められたらと思います。
今回、私どももモーションキャプチャーの撮影現場に同行したのですが、センサーを体中に付けた人間に対して監督がカピバラになりきるための熱のこもった指導をしてくださっていました。「ハシビロコウ」篇の際に展開したCM撮影の裏側を公開する企画も好評でしたし、今後も挑戦してみたいですね。例年7月にも新CMをオンエアしていますので、今年の新CMにはどんな動物が出てくるか、ぜひご注目ください。
今回、私どももモーションキャプチャーの撮影現場に同行したのですが、センサーを体中に付けた人間に対して監督がカピバラになりきるための熱のこもった指導をしてくださっていました。「ハシビロコウ」篇の際に展開したCM撮影の裏側を公開する企画も好評でしたし、今後も挑戦してみたいですね。例年7月にも新CMをオンエアしていますので、今年の新CMにはどんな動物が出てくるか、ぜひご注目ください。
代表的なCM
歌おう! ニッシンボー「ネコ」篇(2024年7月11日オンエア開始)
「歌おう! ニッシンボー」シリーズの第6弾。フルCGのネコたちが海を臨む防波堤の上を歩きながらCMソングを調子外れに歌いつなぐ様子を描いた。本作放送時の昨年7月後期調査では同社初のCM好感度総合ナンバーワンに輝いた(作品別)。
「歌おう! ニッシンボー」シリーズの第6弾。フルCGのネコたちが海を臨む防波堤の上を歩きながらCMソングを調子外れに歌いつなぐ様子を描いた。本作放送時の昨年7月後期調査では同社初のCM好感度総合ナンバーワンに輝いた(作品別)。
写真:長谷川大
その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。