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データベンダーが紐解くマーケティングの潮流:TVメタデータで過去を捉え 未来を見通す


インテージ、エム・データ、CM総合研究所が現在のマーケティングにおけるトピックや各社が保有するデータから見えるトレンドにフォーカスする本シリーズ。第3弾となる今回は「TVメタデータ」を掘り下げていく。近年、テレビで発信された情報は視聴者のみならずSNSなどを通して拡散するなど、大きな影響力を持つ。そうした「TVメタデータ」はどのように生成され、活用されているのか、またその可能性とは。エム・データの田口博康氏にレポートいただいた。
【 CM INDEX 2023年9月号に掲載された記事をご紹介します。】

インタビュイー
田口博康氏
株式会社エム・データ
データマーケティング部 
ビジネスデベロップメントマネージャー
2006年エム・データ入社。TVメタデータの開発と各種メニュー構築を担当し、現在はTV起点のマルチデータコラボを推進し、DB戦略・ビズデブ業務に従事。

テレビが発信した情報を記録するTVメタデータ

  「テレビのデータ」と聞いて何を思い浮かべるだろうか?
 多くは、視聴率やコネクテッドテレビから収集された視聴ログなどの“テレビがどのくらい見られたか”に関するデータを思い浮かべるのではないか。
 エム・データが扱うテレビデータはこれとは異なり、“テレビが何をどのくらい(回数や秒数)報じていたか”つまりテレビが発信した情報を記録したデータで、広告業界では「TVメタデータ」や「後(放送後)メタ」と呼ばれるものだ。
 視聴率や視聴ログは、どの局の何の番組がどのくらい見られたかということが分かるものの、各視聴者に見られた番組や番組内の各コーナーの話題、CMで何が放送されていたかまではつかめない。
 一方、TVメタデータは「何がどのくらい放送されていたか」を記録しているデータベースで、企業や商品、人物、ニュース、事象などあらゆる露出が何時何分何秒から何秒間、何回放送されたかを捉えていて、視聴率とは補完関係をなすデータとなる。
 このTVメタデータは、テレビ番組およびテレビCMの放送実績のすべてをテキスト化しているため、未来の番組表とは異なり、すべて放送実績に基づき詳細に記録されていることが特徴で、AI全盛の今日においても、一部のテクノロジーは駆使するものの、ほぼ人海戦術でデータを生成しているため、精度や粒度の高い高品質なデータを実現しており、逆に生成AIの学習用データとしても活用されはじめている。
 データ生成は、茨城県水戸市にあるデータ入力センターにて総勢100名超のオペレーターが24時間365日テレビを見て、すべての番組とCMの放送実績を独自のノウハウで要約(サマライズ)している。人力でありながらも、データ生成の時間は早いものでは放送から5分前後で完成させ、配信・提供している。
 TVメタデータは大きく4つのデータベースで構成され、番組の放送内容をコーナー単位で詳細に記録した「①番組データ」、CMの放送実績を記録した「②TV−CMデータ」、番組内で紹介された商品や、店舗・施設の情報だけをセグメントした「③商品データ」と「④スポットデータ」で構成される。これらを放送回数や時間などで集計したランキングコンテンツなども生成するほか、テレビに頻出する人物や企業、番組名をはじめとする、固有名詞のマスタも整備し、表記揺れの正規化、ID付与、属性をラベリングした各種マスタをTVメタデータと紐付けている。

放送局や広告会社に限らない
TVメタデータの幅広い活用事例

 「番組データ」と「TV−CMデータ」はこれまで主に視聴調査や効果分析などのマーケティング用途として、放送局や広告会社、調査会社といった企業を通してブランド広告主に活用されてきたが、最近ではネットやアプリサービス、各種SaaS、コネクテッドテレビに加え、小売業界や金融業界など多岐に渡る業界で活用されている。
 「商品データ」はECモールや小売店舗などの販促だけでなく、発注管理や陳列、需要予測、リテールメディアなどのリテールDXに寄与しており、「スポットデータ」は各店舗や施設の住所、電話番号のほかに緯度・経度も付与し、地図やナビなどのMaaSで活用され、店舗や施設の営業形態まで整備しているため、グルメサイトやトラベルサイトでも効果が発揮される。人流データとの統合により、来店効果の分析や予測でも活用されている。
マスタ整備 (図1参照)
 昨今では、TVメタデータと紐づけて整備するマスタの活用事例が増えている。マスタ用途の代表例として、テレビに頻出する人物や企業を対象にID管理、表記揺れの正規化、属性情報や外部コード体系の付与などに対応していて、外部データやマスタと容易にコネクトでき、マルチデータ統合・分析を可能にしている。
 前頁図1は企業マスタのイメージで、正規化された企業名に法人番号や証券コードまで付与している。
図1:証券コードを付与した企業名マスタ(銘柄辞書)のイメージ

ネクストブレーカー予測 (図2参照)
 人物マスタの場合、テレビ出演者の露出量にSNSの投稿量を統合し、タレントパワーをスコアリングするツールサービス「Talent Rank」にも活用されている。
 いま旬なタレントだけでなく、ネクストブレーカーの予兆を先取りできる法則も見出して機能化しており、主にキャスティングに活用されている。
図表2:タレントパワーランキングとネクストブレーカーシグナル

株価上昇シグナル検知 (図3参照)
 企業マスタでは、TVメタをオルタナティブデータとして活用し、株価上昇のシグナルを検知する事例が出てきている。図3はソニーグループの株価を分析した事例で、ソニーグループの番組露出量とCM出稿量(棒グラフ)から、移動平均を用いて長期・中期のトレンド(中段の折れ線グラフ)を生成し、中期線が長期線を上抜けるいわゆるゴールデンクロスをTVトレンド上昇の開始点(株価上昇シグナル)と位置付け、一番下の株価推移グラフ部の網掛けゾーンで見ると、シグナルから2週間以内に株価の上昇が見られた。これを東証TOPIX上位30銘柄で過去5年に拡張してバックテストしたところ、シグナル出現675回の内、約8割の532回でシグナル発生から2週間以内の株価上昇が確認された。
 これらの新たなデータ活用や付加価値が、マスタの整備により実現され、人物や企業のマスタに続いてテレビに露出する「商品」マスタの準備も進めており、テレビ露出が商品販売に与える影響の分析だけでなく、需要予測や自動発注システムとの連携についても研究を行っている。
図表3:株価変動予測(上昇シグナル検知)

ヒット商品シグナル検知 (図4参照)
 商品マスタと外部データの統合事例として、TVメタデータ(テレビ露出した商品情報)と検索量のデータを統合し、ヒット商品の予兆を検知してアラートするサービスを推進している。(食品・情報卸のD&Sソリューションズ社が展開する「POSMIL−TREND」)
 商品名やメニュー名を指定するとテレビ露出量と検索量が日次で可視化され、アラート機能も備えているので、例えば小売企業のバイヤーやラウンダーがトレンド情報を取得して仕入れや店頭POP、リテールメディアなどに活用したり、メーカーの営業担当者が取引先へのマーケティング施策の提案やセールス展開を行うことも可能になる。
 またリテール支援の分野では、第三のメディアとして成長が期待されるリテールメディアでのデータ連携も模索され、テレビの放送内容を小売店舗のアプリやECサイト、サイネージのコンテンツとして活用することが可能になる。
 会員ID、購買履歴、視聴履歴、天候、位置情報などと統合したテレ・デジ・リテールメディア横断広告やマーケティング・ミックス・モデリング(MMM)への活用が想定される。
図4:ヒット商品シグナル検知〜リテールメディア連携(POSMIL−TREND)

データクラウドでのデータコラボレーション (図5参照)
 これらマルチデータ活用を円滑にするためには「データ流通」も重要で、SnowflakeやAWSなどのマーケットプレイスに連携し、クラウド型データ連携プラットフォームなど、さまざまな流通経路からTVメタデータへ容易にアクセスできるよう準備を整えている。(https://markezine.jp/article/detail/39969?p=3
 「テレビのデータ」の印象が変わっただろうか?
 テレビのパワーが問われる中、同報性、共視聴、テレビコンテンツ流通・消費の多様化、リーチ力、そして生活者の行動に直接・間接的に多大な影響を与えるテレビのパワーやTVメタデータを駆使することで、新たなユースケースや市場が共創されはじめている。
 エム・データでは、多業種とのコラボレーションや研究・実験を積極的に進めている。「データをエネルギー」にし、「データで世の中やビジネスを面白く」できる、共創パートナーを増やしていきたいと考えている。
図5:データクラウド「Snowflakeマーケットプレイス」でのデータコラボレーション

その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。