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JAC AWARD 2022 グランプリ受賞者のインタビュー 【ディレクター個人応募部門 畑野亮氏】


 一般社団法人 日本アド・コンテンツ制作協会(JAC)が主催する『JAC AWARD』は映像文化の発展を目的に、映像クリエイターの発掘・人材の育成・映像技術の向上や若手のモチベーションアップを図り、制作サイドの見地から表彰を行う賞として2007年に設立された。2022年度より制作実費の上限を設けた「ディレクター個人応募部門」が新設され、映像コンテンツ制作を支えるすべての人を対象としたアワードへと進化を遂げている。
 本記事では各部門のグランプリ受賞者から畑野亮氏(株式会社 電通クリエーティブX)に受賞対象となった仕事の概要や広告制作に携わる上で大切にされている考え方、挑戦したいことなどについて語っていただいた。
【 CM INDEX 2023年4月号に掲載された記事をご紹介します。】

インプットし続け、作品のプラスアルファに生かす

畑野亮氏
株式会社 電通クリエーティブX
映像ディレクター
京都府出身。神戸大学経営学部卒業。大学時代に所属する劇団のPVを作ったことをきっかけに映像ディレクターを目指す。好きなバンドはクリープハイプ。好きな俳優は高橋一生。
受賞作品「ささやかな幸せ」
同じ部屋を舞台に、一緒に食事をするゾンビの夫婦と多忙な生活ですれ違いが続いていた過去のふたりをそれぞれ描き、「人間らしい暮らしってなんだろう」と問いかけた。

— 受賞の感想、制作エピソードについて
 審査会当日、2巡目に発表された自分の作品の点数がトップをキープしたまま審査が終了し、自信満々というわけではなかったので、うれしいよりも先に「まさか自分が」という驚きがありました。
 ひとりで作っていたので若干寂しかったこともあり、同期から「頑張ったね」とお祝いしてもらえたのは何よりでした。上司や先輩からのお祝いの言葉、社長賞、当社役員との会食とうれしいことが続き、反響の大きさも感じました。企画段階からさまざまなアドバイスをくださった先輩ディレクターの方々に心から感謝しています。

誰もが共感できる着地点を目指し
徹底した準備と粘りで映像を形に

 10万円の予算で自分ひとりでできる企画を立てることが最初のハードルで、撮影場所や機材、美術のことを考えるとただアイデアを出せばいいわけではありません。また「しあわせ?」というテーマにも悩みました。幸せは人それぞれのものですが、映像に落とし込むのであれば誰もが共感できる着地点を見つける必要があります。大きく捉え過ぎると薄っぺらに、独自の視点で切り込み過ぎると自己満足になりかねません。なかなか突破口が見つからなかったのですが、「幸せに関することわざを調べてみたら」という先輩からのアドバイスをいただき、ピックアップしていくうちにイメージが広がっていきました。いくつも企画案は用意したのですが、忙しくて食事もゆっくり取れないときに、偶然ゾンビものの映像を目にして「これだ」とアイデアがつながりました。幸せの源になっている人間らしい生活を描くのに、「ゾンビ」が主役というギャップが面白いのではないかと。
 ゾンビメイクは自分の顔で練習し、自宅で撮影することにしたので、その片付けも大変でした(笑)。大学時代に演劇をやっており、当時から一緒にやりたいと思っていた役者さんに出演いただくことができ、表情や動きでいい味付けをくださったことも作品の質的向上につながったと思っています。コンテでは人間からゾンビという流れだったのですが、編集のタイミングでゾンビのカットを冒頭に持ってくるなど、最後の最後まで粘り強く取り組みました。
— 仕事をする上で大切にしていきたいこと
 まだ経験が浅いので、まずは自分が面白いと思えるものを作ること。また以前、先輩に演出の意図を聞かれて「なんとなく」と答えたところ、「それはアーティストの仕事です」と注意されたことがありました。それ以来、自分の感覚ではなく、常にインプットをしながら勉強し、企画のアイデアに生かせる材料を準備することも大切にしています。
 人に支えられる演劇の経験から人に興味があり、いつか吉田大八さんや川西純さんのような、人の魅力を映し出せる監督になりたいと考えています。今回の受賞はディレクターを続けていく自信につながりましたので、作品に少しでもプラスアルファを加えられるよう、これからも全力で広告制作に向き合っていきます。
その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。