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誰ひとり取り残さないCMを目指して — 字幕付きCM普及推進協議会 —


今年10月にすべての放送枠で「字幕付きCM」の受け入れが開始された。字幕付きCMは聴覚障がいや難聴を抱える人の情報保障、マーケティング施策として価値の高い取り組みだ。字幕付きCM普及推進協議会を構成する3団体より、日本広告業協会(JAAA)の沼澤忍氏、日本アドバタイザーズ協会(JAA)の小出誠氏、日本民間放送連盟(民放連)の窪内秀典氏に字幕付きCMの持つ多面的な価値やこれまでの活動などについてお話をうかがった。
【 CM INDEX 2022年11月号に掲載された記事をご紹介します。】

沼澤 忍氏
一般社団法人
日本広告業協会
制作取引委員会委員長

小出 誠氏
公益社団法人
日本アドバタイザーズ協会
テレビ・ラジオメディア委員長

窪内 秀典氏
一般社団法人
日本民間放送連盟
CM運行等対策部会幹事

字幕付きCM普及推進協議会とは
字幕付きCMを通し、すべての視聴者の豊かな暮らしとCMの価値向上のための取り組みを行う。ロードマップを作成し、2020年秋から段階的に字幕付きCMの放送局、放送枠を拡大。
詳しい活動内容は『字幕付きCM PORTAL WEB SITE』(jaaa.ne.jp/jimaku_cm_portal/

聴覚障がい、聴覚不安のある人にもCMを通してメッセージを届けたい

— 字幕付きCMの概要、意義について
沼澤:字幕というとトレインチャンネルや映画のようなオープンキャプションを思い浮かべる方が多いのですが、「字幕付きCM」はテレビリモコンの字幕ボタンを押すことによって初めてモニターに表示されるクローズドキャプションが付帯されたCMで、画面右上に「字幕」と表示されているものが該当します。2016年に総務省が実施した調査によると、聴覚障がいや加齢などによる聴覚不安を抱えている方は全国に約3400万人いらっしゃるという結果が出ています。私自身がCMプランナーだったこともあり、これだけ多くの方にCMを通した商品やサービスの情報が伝わりにくかったことは解決しなければならない課題だと感じました。字幕付きCMはビジネスを推進する上で欠かせない要素となってきたSDGsやESG経営に資する取り組みだと考えています。
小出:私たちアドバタイザーが広告のメッセージを送る際には、ひとりでも多くの方に届けるべく、クリエイティブを工夫したりスペースを確保したりしていますが、CMに字幕を付けるという手段を見過ごしていたことを非常に残念に思います。私がJAAの電波委員会(現 テレビ・ラジオメディア委員会)委員長に就任した2019年の時点で、字幕放送の普及目標となる対象番組のうち字幕番組の割合は9割を超えていた一方で、字幕付きCMは0.3%(2020年3月 JAA調べ)にとどまっていました。SDGsには「誰ひとり取り残さない」という原則があり、耳の不自由な方への情報アクセシビリティーの確保という点で、広告主として深刻な問題として捉えなければならないと感じました。

影響力の強いCMへの字幕の付与はマーケティングとしての価値も高い

— 字幕付きCMのマーケティング上のメリットとは
沼澤:以前にも調査を実施したことはありましたが、今春にあらためてビデオリサーチさんにご協力いただき、字幕付きCMの効果について調査をいたしました。その結果、聴覚障がいのある方にとって字幕付きCMは字幕のないCMに比べ、商品・サービスの理解度やブランドの認知度、購入・利用意向などの数値が高まることが分かりました(図1)。当たり前のことかもしれませんが、字幕付きCMは効果的であると確認できています。
 ホームページやグラフィック広告で文字情報を伝えればいいのではという声もあるかもしれませんが、テレビCMという強力な広告メディアに字幕を付けることは、影響力やコストパフォーマンスの面でマーケティング上のプラスに働くと考えています。
 聴覚障がいのある方たちの意見を聞く中で、小学生のころに失聴し現在は女子大生の子どもを持つお母様から「娘が字幕の付いたCMを見て感激しています」というメッセージをいただいたんですね。これまではCMが流れると席を立つことが多かったようで、CMを見て喜んでくれていることを知って、非常にうれしかったですし、このプロジェクトの社会的な意義を実感いたしました。

図1:字幕付きCMの効果(聴覚障がい者対象)

— 字幕付きCMの放送までにはさまざま壁があったのではないでしょうか
窪内:当初は字幕付きCMの絶対数も少なく、設備などの環境も不十分だったため対応が難しい状況ではありましたが、SDGsなどの社会的な潮流を踏まえ、放送事業者の責務として字幕付きCMへの取り組みに向き合ってまいりました。この数年で放送設備の改修や字幕付きCM素材の運行に必要な機能の拡充、チェックなどの運行ノウハウの獲得を進め、2020年10月に関東エリア5局のネットタイム枠・ローカルタイム枠で字幕付きCMの受け入れを開始し、そこからロードマップに則って放送局、放送枠を順次拡大して今年10月にすべての放送枠での受け入れが可能となりました。
 すでに新しいお問い合わせや素材搬入が増えているという実感があり、字幕付きCM普及推進協議会で作成したパンフレットの配布や民放各社の営業担当者からアドバタイザーの方へご案内をしてきたことが実を結んだと考えています。また字幕付きCMの取り組みや有用性を訴求するCMを制作し、昨年7月から今年9月末までに全国で約5万回オンエアしています。普及に向けたこうした取り組みを引き続き進めてまいります。
小出:ロードマップを作成したのは2020年ですが、それ以前からポストプロダクションさんを含む制作サイドでは字幕付きCMへの対応が進んでいました。ただ、字幕付きCM素材を制作してもオンエアできる放送枠が少なく、また字幕付きCMと字幕のないCMの2種類の素材を用意しなければならないため、アドバタイザー側は字幕付きCMへの対応に積極的になりにくい状況でした。一方で、民放連の皆さまと話し合う中で、この課題の解決に向け前に進める上で主にふたつの懸念材料がネックになっていることが見えてきました。ひとつは字幕付きCMが放映された場合、前に流れた企業のCMの字幕が次の企業のCMにかぶってしまう事故発生の可能性。もうひとつが字幕のないCMが字幕付きCMに挟まれて流れることで、字幕のないCMのアドバタイザーから「社会課題に消極的という印象を持たれないよう、流す位置を変更してほしい」といった要望が放送局の営業サイドに来る可能性があること。これらの懸念を解消するために、JAA内で協議し、字幕がかぶっても補償を求めないこと、CMのポジションについて問題にしないことを決定しました。
 実際のところ、放送局の技術担当の方には基本的にCMをまたいで字幕はかぶらないと確認しておりますし、ポジションについてはアドバタイザーが字幕付きCMに踏み出すきっかけになればと考えています。
窪内:例えば情報として重要な機能性表示のテロップに字幕が重なることをどのようにジャッジすべきか。一人称、二人称、三人称で色分けをするといった工夫はしておりますが、より多くのキャストが出演するにぎやかなCMの場合はどのようにキャプションを表示するのが適切かなど、課題は残っています。ただ、こうした課題も数が増えたからこそ見えてきたものですので、知見を重ねることで最適化されていくと考えています。

字幕付きCMの多面的な価値をCMに携わるすべての人へ伝えていく

— 現状、普及に向けた今後の活動について
沼澤:日本ポストプロダクション協会(JPPA)さんにご協力いただき、字幕付きCMの制作本数を追えるようになったのですが、それによると各月とも前年の2〜3倍に伸びています(図2)。もともとの本数が少なかったこともありますが、受け入れ枠の拡大によって今後も大きく伸長していくことが見込まれます。
小出:字幕付きCMを基本的に全国のすべての局のすべての枠で流せるようになったことをJAAの会員社の方々に伝え続けることが大切だと思っています。同時に素材としては字幕付きCMだけを作ればよくなったことや、字幕を付けるには、クリエイティブ全体の制作費からすればそれほど大きな金額ではない、数十万円の費用で可能なことなどを広めていければと思っています。ひとりでも多くの方にメッセージを届けるというCMを出稿する上での基本的な姿勢にもとづき、CMに字幕を付けることの価値をアドバタイザーの皆さまにより深く認識いただければと思っています。
窪内:全CM枠で字幕付きCMの受け入れが開始したものの、放送局のすべての社員が理解できているわけではなく、またローカル枠の地元企業のお客さまもいらっしゃいます。誰ひとり取り残さない放送を実現するために、そうしたお客さまも含めた放送に携わるすべての方々への周知が重要だと考えています。その結果として案件が増え、ノウハウの蓄積と作業負荷の軽減、字幕付きCMの質的向上といった好循環が生まれるのではないでしょうか。
沼澤:字幕付きCMのプロジェクトはJAAさん、民放連さんのお力で大きく前進したのですが、広告会社の社員でもまだ取り組みを知らない方がいらっしゃいます。そのためセミナーでの講演や取材など、周知につながる活動を地道に重ねていきたいですね。
 また全国に広げていくことも大きなミッションです。字幕を付ける仕事は専門のプロでなければできないものですが、字幕に対応できるポストプロダクションは大阪に2社増えたものの、首都圏に集中しています。主要都市に機材と技術者を備えたポストプロダクションが設置できるようサポートにも努めてまいります。

図2:字幕付きCMの制作本数推移

その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。