グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



TOP >  CM INDEX WEB >  Focus:自動車業界のコミュニケーション戦略 日産自動車株式会社

Focus:自動車業界のコミュニケーション戦略 日産自動車株式会社


技術で生活者の人生を豊かに彩る

大きな変革期にある自動車業界各社の取り組みに迫る特集企画の第1弾に、日産自動車 株式会社を迎えた。同社は新型軽EV『日産サクラ』を6月に発売し、松たか子を起用したCMは2022年7月度のCM好感度調査で自動車業類の1位に輝くなど、好評価を獲得している。電気自動車や自動運転といった最新技術で業界をリードする同社のコミュニケーション施策について、マーケティングの指揮を執る増田泰久氏にお話をうかがった。
(収録:2022年8月8日)
【 CM INDEX 2022年9月号に掲載された記事をご紹介します。】

インタビュイー
増田泰久氏
日産自動車株式会社
日本マーケティング本部
ディビジョンゼネラルマネージャー

最先端技術を搭載した軽の電気自動車
新時代を切り拓く代表的な存在に

—軽電気自動車『日産サクラ』がCM好感度の自動車業類1位に輝くなど、多くの注目を集めています
 『日産サクラ』は当社初となる軽のEV(電気自動車)ではありますが、軽自動車、もしくはコンパクトカーの枠組みに当てはまらないカテゴリーブレイカーというべき車に仕上がっています。軽自動車の小回り性能に加え、当社が培ってきた最先端の技術を惜しみなく投入し、EVならではの走行性能や静粛性を実現しました。
 日産サクラという車名は社内公募で決まったもので、日本で最も愛されている花である桜に由来し、お客さまにとって最良のパートナーでありたいという思いや、電気自動車時代を彩る代表的な車になってほしいといった願いを込めています。
 電気自動車は航続距離を稼ぐために大きなバッテリーを搭載する必要があり、車体の大型化、重量増が避けられない一方で、日本のドライバーの一日当たりの平均走行距離は50㎞に満たないというデータもあります。日産サクラの最大航続距離は180㎞と『日産リーフ』や『日産アリア』に比べると短いものの、日常生活にご使用いただく中で不便を感じることはありません。
 また国内の新車販売台数の4割を軽自動車が占めており、こうした大きなマーケットに登場したEVの日産サクラが多くの方に関心を持って受け入れていただいていると感じています。

軽EVの登場感と運転の楽しさを表現
“キュン”とする体験を届けたい

 当社では商品を発売する際にターゲットカスタマーを設定し、そのインサイトを抽出して商品の仕様や価格、コミュニケーションを決定しています。日産サクラでは40代の女性で、前向きに物事を捉えて新しいことに挑戦したい、可能性や活動を広げたいといった思いを抱いている方々を主なターゲットに据え、その代表として松たか子さんにCMに出演いただきました。
 日産サクラがお客さまへ心が躍るようなきっかけや体験を提供できると伝えるためにコミュニケーションの方向性について何度もリサーチを重ね、社内では“キュン”とすると言っていますが、そうした瞬間をCMに投影しています。冒頭の「私の軽は充電100%から始まる」というセリフで従来の軽自動車とは一線を画す車だと伝え、松さんが楽しそうに運転する姿や日産サクラがスムースに坂道を駆け上がるシーンを通して操作性や走行性能の高さを表現しました。この“キュン”という感覚は、車体のデザインや四季をイメージしたカラーラインナップにも取り入れています。
 CMの桜の花びらが舞う演出については、桜が日本人にとって特別な存在であり、リサーチでも評価が高かったため、取り入れることを決めました。ネーミングはもちろん、車の随所にモチーフとしてあしらわれていますから、この演出があることによってより視聴者の方の印象に深く残る表現になったと考えています。
 またターゲットカスタマーのインサイトより、同世代からだけでなく、その子ども世代からも積極的に情報収集をする傾向があると認識していましたので、CM楽曲では松さんと若い世代に人気のマカロニえんぴつさんにコラボレーションしていただくことにより、多方面での話題化を図りました。
 日産サクラのヒットは予想できましたので、ローンチについては販売の山をどのように作るのがベストシナリオであるかを議論しました。発表とともにウェブ上で情報を公開し、まずは日産車のユーザーさまや当社とお付き合いの深い方、感度が高く新しいものをいち早く購入したい方にフォーカスしました。車が店舗に配備されるタイミングを見計りながらアーリーアダプター、フォロワーとお客さまの層を徐々に拡大し、合わせてYouTube、テレビと広告のリーチの幅も広げていきました。こうしてコミュニケーションのグラデーションを作ることで、現場もスムースに販売できている、という声をいただいています。

日産サクラ
100%電気で走る新しい軽の電気自動車で、「プロパイロット パーキング」などの最新技術を搭載し、十分な航続距離、室内空間を確保。リーズナブルな価格も魅力だ。
「電気自動車になった軽」篇(2022年7月1日オンエア開始)
桜の花びらが舞う中、松たか子が「私の軽は充電100%から始まる」という語りとともに充電の完了した同車を運転して街へ向かう内容。松がマカロニえんぴつとともに歌唱した『たましいの居場所』の特別バージョンをBGMに使用した。
— 技術訴求のCMが視聴者の心を捉えています
 昨年末からオンエアした電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」を訴求するCMでは、峠などの険しい道で同乗者が酔ってしまうことを心配し、ドライバーが満足に運転を楽しめないというシチュエーションを想定しています。そこで木村拓哉さんが『日産アリア』を運転し、その安定感やスムースな加速を満足げに体感する様子、後部座席で子どもが気持ちよさそうに眠る姿を通し、e-4ORCEがもたらすドライブの楽しさという情緒的なベネフィットを伝えました。技術だけを語るのではなく、お客さまが感じているジレンマを解消する存在としてe-4ORCEを描いています。
 一般的な車ですとコーナーを曲がる時に車がブレてしまうものなのですが、e-4ORCE搭載車はスムースにコーナリングができ、恐怖を感じることなく運転ができます。木村さんにはe-4ORCEを事前に体感いただき、そのベネフィットを十分ご理解いただいたという背景があったからこそ、熱量を帯びたCMに仕上がったのではないでしょうか。
— 『日産エクストレイル』の新モデルも登場しました
 『日産エクストレイル』は悪路も悠々と運転したい、かつ上質感も求めているお客さまへ向けた車種です。木村さんに出演いただいたCMでは、日産エクストレイルが山道や雪道を駆け抜ける映像に加え、後部座席に同乗しているバイオリニストが演奏するシーンを通して、「e-POWER」ならではのスムースな走行性能や、e-4ORCEによる車体のブレのなさ、そして上質感を演出しています。日産エクストレイルも売上は好調で、おかげさまで『日産ノートe-POWER』や『日産セレナe-POWER』を超える早さで受注1万台を突破しました。

日産エクストレイル
4代目モデルとなる新型は同車のDNA「タフギア」を継承しつつ「上質さ」を加え、「e-POWER」と「VCターボ」、「e-4ORCE」を搭載した新しいSUVへと生まれ変わった。
「悪路も悠々」篇(2022年7月26日オンエア開始)
雨の降る森で木村拓哉が『日産エクストレイル』を始動させ、山道や雪道のドライブを楽しむ。ラストは後部座席で演奏をしていたバイオリニストに笑顔でハンドサインを送る内容だ。
— 今後の取り組みについて
 当社の技術の軸となっているのが、「共に切り拓く、モビリティとその先へ」をテーマにした長期ビジョン『Nissan Ambition 2030』での取り組みにもある、電気自動車「EV軸」と自動運転の「AD軸」です。このふたつを特別なものとせず、あらゆる層のお客さまに味わっていただくために、コンパクトカーの『日産リーフ』をはじめ、家族向けの『日産セレナe-POWER』、高級志向の『日産アリア』といった幅広い車種にこれらの技術を搭載してまいりました。当社は電動車販売比率が8割近くとなり、今回の新型サクラの登場によって電気自動車が手の届きやすい現実的な選択肢となったこと、また日産は軽自動車も含めて車種問わず最新技術を搭載するのだと感じていただけたらうれしいですし、今後もラインナップは拡充予定です。自動運転については、運転が苦手な方や年齢が上がっていくにつれて運転に対する不安が大きくなった方々も、安心して運転を楽しめる環境作りに寄与できればと思っております。

優れた技術で終わらせない
エンドベネフィットに寄り添うサービスを

— コミュニケーションを通して伝えていく“日産らしさ”についてお聞かせください
 我々が2015年から掲げている「技術の日産が、人生を面白くする。」というスローガンには、日産の技術をただ優れた技術として終わらせるのではなく、その技術を駆使してより多くのお客さまのエンドベネフィットに寄り添いたいという思いが込められています。また、現代のお客さまは何かを購入するときに特別な思い入れが生じ、どのような企業から購入するかも重要視されていると考えています。そのため、常にお客さまのインサイトを理解した上で日産車の魅力を伝え、日産の自動車は楽しい、日産の商品で人生がポジティブに変わるかもしれないとお客さまに心から感じていただけるようなコミュニケーションを継続していきたいですね。
その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。