グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



TOP >  CM INDEX WEB >  Creator Interview 北田有一氏(株式会社 電通)前編

Creator Interview 北田有一氏(株式会社 電通)前編


ブランドが長く愛されるための広告を

“キウイブラザーズ”が歌い踊るゼスプリ インターナショナル ジャパン『ゼスプリ キウイフルーツ』、木村拓哉と芦田愛菜が共演するリクルート『タウンワーク』、中条あやみらを起用した『GU』など数多くのヒットCMを手掛ける北田有一氏。長く愛されるCMを作るために大切にしていることや、今後の広告作りなどについてお話をうかがった。
(収録:2021年7月19日)
【 CM INDEX 2021年9月号に掲載された記事を2回に分けてご紹介します。(前編)】
 ※後編は9月28日(火)に公開
— CMクリエーターを目指したきっかけについてお聞かせください
 生まれたのは日本ですが、小学校を卒業する頃までアメリカに住んでいました。アメリカは当時からケーブルテレビもあり多チャンネルだったため、日本に帰国後はみんなが同じテレビ番組を見ていることや、地上波テレビの面白さとレベルの高さに驚きましたね。インターネットのない時代ですので、人気番組が翌日学校で話題になることも多く、中高生の頃には「マスの文化を作る魅力」に憧れを感じていたような気がします。その後メディア環境が変化する中で、テレビ番組に限らず広告やデジタル、イベントなど何らかの手段でマスに働きかけ、人の心を動かしてみたいと思いはじめました。それが広告への興味につながり、この業界を目指すきっかけとなりました。
 私が電通に入社した年はクリエーティブ配属がなく、当時志望していた営業に配属されました。担当していたイオンの「singing AEON」というキャンペーンにはレジェンド級の優秀なクリエーティブのスタッフが多数アサインされていて、その中のCDのひとりから「営業もコピーを書いてみろ」と言われてアイデアを出すこともありました。このときに広告クリエーティブの面白さに初めて触れた気がします。これが運命のいたずらだったのかもしれませんが、その翌年に同期全員で受けることになっていた転局試験に運良く合格し、入社2年目でクリエーティブ局へ異動することとなりました。
— 6年間担当されているゼスプリ キウイフルーツのCMがヒットを続けています
 2016年のシリーズ開始時から大切にしているのは、長く愛される国民的なキャラクターを作るということ。“キウイブラザーズ”の知名度が上がるのはありがたいことですが、同時に一過性のブームとして消費されないよう、広告表現や露出の量などあらゆる面について慎重に判断しています。立ち上げ時から一緒に担当しているADの関戸貴美子やコピーライターの木下舞耶とは“攻めと守りのバランス”について話すことが多いですね。
 開始当初のCMではキャラクターや商品の栄養素などの認知に注力し、4年目からは『恋のマイアヒ』の替え歌で「♪キウイ食って アゲリシャス」とキウイブラザーズが歌い踊るCMで“攻め”に転じました。攻めというのはキウイブラザーズの新たな一面を発見していただき広く話題になるような意外性のある施策です。
 5年目を迎えた昨年は「♪ヘルシーは好きなことを楽しみながら」といった心和む楽曲を軸に60秒CMを展開しました。15秒スポットに見慣れている視聴者には60秒という長さが新鮮に映ると考えて、大胆に仕掛けました。結果、予想以上に大きな反響をいただき、2020年度の作品別CM好感度で総合1位になることができました。
 一方、今年のCMはブランドとしてのメッセージを浸透させる時期だと考え、あえて昨年と同じテーマで展開しています。「ゼスプリのキウイはいつもみんなの健康を楽しく応援してくれる」といったイメージを視聴者の共通認識として定着させることを狙ったものです。いわば“守り”のフェーズですが、表現面では一切妥協せずこれまで以上に多くの方に楽しんでいただくことを目指した結果、今年6月度のCM好感度調査で初の商品別ナンバーワンを飾り、非常にうれしく思っています。“守り”という意味では、キャラクターの露出を増やしすぎないことも意識しています。単に露出を制限するのではなく、限られた情報発信の機会や生活者との接点をいかにクオリティーの高いものにするか。“露出頻度と質”の見極めが重要ですね。例えば店頭のPOPや商品パッケージは主婦層など買い物の頻度が高い方は週に何度も目にされますので、デザインのレベルを高く保つことでチープな印象を与えないよう心掛けています。
 今年の攻めの企画としては、サントリー食品インターナショナル『クラフトボス』とのコラボに大きな反響がありました。水本晋平CDとプランナーの岩田泰河の「一番人気のフルーツといえばキウイ」という発想から生まれた企画で、キウイブラザーズがアニメキャラクターとして『クラフトボス フルーツティー』のウェブCMに登場しました。私自身も大好きな商品ですし、双方のクライアントと制作チームが互いのブランドを尊重しながら作り上げたことで好結果につながったと感じています。こうしたコラボも含め、露出のタイミングやクオリティーを長期的な視野で計算しながらコミュニケーションを設計し、キウイブラザーズとともに長く愛されるような広告を作っていきたいと考えています。
北田有一氏 株式会社 電通 第1CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター
2004年電通入社。好感度の高いテレビCMと若者向けデジタル施策との統合を得意とする。CM総合研究所のCDランキングでは2019年度より2年連続のトップ10入り。ACC ブランデッド・コミュニケーション部門グランプリ、カンヌライオンズ金賞、Spikes Asia金賞、 ADFEST金賞、D&AD銅賞、TCC審査委員長賞、TCC新人賞、ヤングカンヌ日本代表など、国内外で100以上受賞
その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。