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Creator Interview 眞鍋亮平氏(株式会社 電通)前編


深いエンゲージメントを生む広告を

2020年度のクリエイター・オブ・ザ・イヤーを受賞した眞鍋亮平氏。デジタル領域を中心に大塚製薬『ポカリスエット』やアシックスの広告を手掛けるほか、NewsPicks StudiosのChief Creative Officerも務めるなど幅広いフィールドで活躍している。デジタルとマスを掛け合わせたコミュニケーションや耐用年数の長い広告作りについてお話をうかがった。
(収録:2021年5月14日)
【 CM INDEX 2021年6月号に掲載された記事を2回に分けてご紹介します。(前編)】
 ※後編は6月23日(水)に公開
— デジタル領域のコミュニケーションを担当されている『ポカリスエット』の広告展開について
 ポカリスエットの広告は私がチームに入る前年の2015年からリブランディングに取り組んでいました。当時ポカリスエットは健康飲料として広く認知されている一方、“若者のブランド”というよりも風邪や熱中症など体調のすぐれないときに飲むものと思われている課題がありました。そこで若い世代が気持ちよく汗をかいた後に飲むという本来のポジティブなブランドイメージを取り戻すべく、「潜在能力をひき出せ。」「自分は、きっと想像以上だ。」というコピーのもと、中高生に向けた新キャンペーンを展開しました。
 また、それまでポカリスエットは春と夏の年に2回、CMを展開していましたが、テレビの視聴時間が少ない若年層との接点が不足していたことから、2016年よりデジタル領域のクリエーティブ・ディレクターとして私がチームに加わりました。最初に提案したのはポカリスエットで“潜在能力”が引き出された瞬間の写真をSNSに投稿してもらう「#ポカ写」キャンペーンです。ティーン向け雑誌『Popteen』の人気モデルにお手本の写真をアップしてもらうことで火がつき、最終的にはラフォーレ原宿で優秀作を展示するイベント「#ポカ写展」を開催するに至りました。夏休み期間ということもあり予想を上回る来場者数を記録するなど、クリエイティビティにゲーム性を加えた種目を提示すると若者は本気で応えてくれるという確かな手応えを感じました。これを次の段階としてダンス動画の投稿企画に発展させたのが「ポカリガチダンス選手権」です。CMで八木莉可子さんが踊るダンスのお手本動画を公開したところ、「まねして踊ってみた」という動画が次々に投稿されたんです。それを受けてMixChannelでダンス動画のコンテストを行い、その優秀作をつないだ60秒CMを『ミュージックステーション』の枠で1回限定で放送しました。その後も視聴者の反応に合わせて形を変えながら、ダンスを軸にデジタルとリアル、マスを掛け合わせたコミュニケーションを数年間継続したことでポカリスエットと若者の間に深いエンゲージメントを再構築できたように思います。
— コロナ禍においていち早く放送された「ポカリNEO合唱」篇が大きな反響を呼びました
 本作は2019年の秋に考えはじめた企画で、当初は500人の生徒が集結して合唱するCMを予定していたんです。ですが昨年2月末に政府から全国の小中高校などへ臨時休校が要請されるなど事態が深刻化し、企画を見直すこととなりました。状況が刻々と変化する中「今できることってなんだろう」と実現可能な表現や手法についてチームで必死に模索を続けました。その時点で中高生の自撮り画像を使って「NEO合唱」を完成させるという私たちデジタル担当のチームが発案したウェブ動画の企画が進行していたことから、その企画をCMにスライドしてはという案が生まれ、制作プロダクションのスプーンさんにスタッフの自撮り動画を組み合わせたVコンを大急ぎで作っていただいたんです。それを元に大塚製薬さんにご提案したところ、すぐにGOサインをいただくことができました。それまでに積み重ねた投稿動画を用いたキャンペーンの実績や制作チームとの信頼関係があったからこそ、未曾有の事態の中でもスピーディーな決断が可能だったのだと思います。
 その後は出演予定だった500人の中から有志を募り、97人の中高生とリモートで何度もやり取りしながら、ひとりひとりが自宅で歌う動画を元に1カ月弱でムービーを完成させました。大塚製薬さんからは1日でも早く世に出したいというご要望があり、ウェブ動画は4月10日、CMは同17日から公開しました。緊急事態宣言の発令直後ということもあり、かつてない反響をいただきました。我々スタッフも、参加してくれた大勢の中高生から目に見えないポジティブな生命力や勇気をもらったような気がします。これまでのポカリスエットの広告は「ブランドが若い世代を応援する」ものでしたが、本作では「中高生が大人を含めたすべての人をエンカレッジする」という新しいベクトルが誕生しました。コロナ禍のために急ごしらえで制作したものではなく、ブランドの軸を変えずに表現手法だけを時代にチューニングしたことも好評のゆえんかもしれません。磯島拓矢さんによる「渇きを力に変えてゆく。」というコピーは企画当初から決まっていたものです。磯島さんは常にブランドの本質へ深く潜ってコピーを書かれるので、社会状況が変わってもその時代を生きる人への言葉として機能するんですよね。今回もブランドの根幹を見極める磯島さんの力に驚かされました。
眞鍋亮平氏 電通 第5CRプランニング局 グループ・クリエーティブ・ディレクター
一橋大学社会学部卒。1997年電通入社。2014年からクリエーティブ・ディレクター。2020年よりNewsPicks StudiosのChief Creative Officerを兼務。主な仕事にYouTube「好きなことで、生きていく」、大塚製薬「ポカリNEO合唱」、ONE OK ROCK×Honda「#10969GVP」など。カンヌライオンズゴールド、アドフェストグランプリなど国内外の受賞多数
その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。